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星を駆ける①






自身の墜落させた惑星へ向かって昇天して来る流星を見た創星神は、己の勝利を確信した。


見たこともない心技だ。(マスター)響心魔装(シンクロ・デバイス)二人による通常の心技とは異なる、複数人と、そこに繋がった世界中のニンゲンの心素(エナ)を込めた、数多く存在する響心魔装らの中でも、間違いなく最強の威力を持つだろう心技。


そこに秘められた心素量は、堕ち行く惑星を貫き、砕くに足る充分なものだと一目で分かった。


そして、そんな心技をこの惑星(エーテルリンク)に向けて放ったということは……すなわち、奴らは選択したということだ。エーテルリンクではなく、地球と、自分たちの命を長らえさせる方を。


その選択は、先の奴ら自身の発言と、信念を覆すものだ。


絶対的概念である、『死』を克服出来る存在……そうだと言い切りこそしなかったものの、奴らは、あの少年は、それがアイドルであると強固に主張した。アイドルという、日々を生きる力を与えてくれる存在があるから、いずれ来るだろう生の終わりをも、恐怖せずにいられるのだと。そして、そんな彼女らの舞台のために、創星神(この私)に勝つのだ、と。


その舞台。ライブとやらは、エーテルリンクで行われるのだという。今まさに、地球を砕く弾丸として射出され、貴様らが迎撃している、この星で!


雄々しく発言しておきながら、自らの手でその大舞台を破壊しているのだから、とんだ笑い種だ!

口ではあれだけ偉そうなことを言っていたくせに、私という神に抗うまでの気概を見せていたくせに、いざ自分が死に直面してみたらこの有様とは!


後を託した天空神アーツ……かつて私の助手であった、アルトもこれでは浮かばれまい。


世界を砕く惑星の弾丸と、天へと立ち昇る夜色の五芒星は、地球の大気圏間際で衝突し、均衡を保っているようだ。しかし、じきにどちらかの圧力が雌雄を決し、片方、ないしは双方の世界が崩壊するだろう。むしろ、奴らの心を折るという意味で言うならば、こちらの弾丸が破られる結末の方が良いかもしれない。


どちらの結末が訪れようとも、奴らの敗北だ。


雌雄が決された時、今度こそ奴らの心の芯は折れる。


そうなれば最早、二世界の神たる私の敵ではない――


得意の未来予知……占いをするまでもなく、この後に訪れる未来を確信した創星神の頬が、本人の意思に反して吊り上がっていく。


まだだ。まだ勝利を喜ぶのは早い。全てを一笑に付すのは、心が折れたやつらを蹴散らしてからだ……


「……? なんだ……?」


思わず緩んでしまう口元を押さえた創星神が、その違和感に気付き眉をひそめる。


それは、墜落させている惑星の弾丸だった。当然ながら、宇宙のどこかに存在していた惑星をそのままに落下させるのではなく、魔法効果による硬度強化や落下速度の上昇を付与し、より惑星を砕く弾丸としての威力を高めている。


対する夜色の五芒星だが、惑星の弾丸に対し大きさは遥かに小さい。地球の物で例えるなら、バスケットボールに対する爪楊枝といったところか。しかし、その細い波動に込められた地球中のニンゲンどもの心素は、エーテルリンクという名の弾丸を真正面から貫き、崩壊させるに充分なものだ。


今にも、いや、とうの昔に、拮抗するまでもなく惑星を貫通し、崩壊させていておかしくない程の威力。


その筈、なのに。


「何故だ……!」


両者が衝突して、およそ一分ほどの時が過ぎている。


「何故、変わりなく拮抗し続けている……!?」

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