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星を掛ける⑫

カメラに映し出される範囲へ突入すると共に、創星神と相対していたときとはまた別のプレッシャーを全身に感じ、思わず心臓が飛び跳ねそうになった。


おそらくだが、今のコメント欄は、ライブの真っ最中に突如現れた謎の人間――つまりは俺――への暴言や戸惑いでいっぱいだろう。神装神衣状態で、本来の俺の姿では無いのがせめてもの救いか。


身に降りかかる不可視の圧力。大舞台で、大勢の人の目の前で、やり直しのきかないぶっつけ本番の仕事を成し遂げなければならないという責任感とプレッシャー。


――そういった不安も、委縮も、全部力に変えて……あんたに、勝つ!


曲調が再び穏やかになり、小鳥の物語が終盤へと突入する。ディアナ、アイリス、ルナちゃんの三人のパフォーマンスも、それに合わせた緩やかなテンポのダンスへと変化する。


三人の中心部分で立ち止まった俺は、頭上の桜の扉……リラの一部を残したまま維持された扉を仰ぎ、その向こうで立ち尽くす創星神を睨みつけた。


金色の女性神の、落ち着いた冷徹な目が訴えてくる。

――それがどうした? その少女らが世界を沸かせる歌と踊りを披露出来るから、何だというのだ?


その舞台が……死を克服(私を否定)するものに成るものか、と。


召喚され続けていた異世界たる惑星は、どうやらその質量の全てが転移完了したらしい。創星神の頭上で光る白鍵が輝きを強め、その限界を図ることすら出来ない程の量の魔素(マナ)で、惑星の、弾丸としての強度や威力を増していく。


冷や汗が伝いそうになる。ここでしくじったら何もかもが終わりだ。

俺は死に、地球は砕かれ、エーテルリンクも無事では済まず……最後には何も無くなる。


そう。今ここで素晴らしいステージを披露してくれている三人の、アイドルとしての輝かしい未来も――


その事実を再認識した途端、胸の奥で猛烈な感情が湧き上がる。

彼女たちの未来を繋ぐため。予定されているライブツアーを成功させるために。


左手の霊剣を小さく振るう。


『いえす……マスター……』


応じた相棒が、その身を五枚の桜色の花弁へと分かつ。三人のアイドルの周囲を、舞うようにひらひらと旋回する。


その様子を見て。


「さ、やっちゃいましょ」


俺の右腕を、アイリスが。


「うん。頑張ろうっ」


左腕をルナちゃんが、それぞれの腕で抱き止める。

こんな状況でなかったら、美少女二人に両腕を抱きしめられて気が気じゃなかっただろう。


そして。


「……行きましょう。マスター」


ディアナの全身が、解ける。夜色の帯と化した彼女は空中へ向かうと、くるりと旋回し、俺の右腕で再び形を成す。


それは剣。いくつもの苦難を共に乗り越え、そして、これからの未来を切り拓くための姿。


ディアナが変じた夜剣を、両手で握り締める。俺たちの周囲を旋回していたリラの桜盾が、夜剣の刀身を囲うような位置へ飛来し、回転し始めた。

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