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星を掛ける⑪

流れるのは、まずは穏やかな曲調。夜空に尾を引く流星を見つけた小鳥のお話。


流星の輝きに魅せられた小鳥が、彼の星が流れる天空へ辿り着くべく、彼方の空へと挑み続ける物語。


そんな物語の旋律が、三人のアイドルらによって奏でられている。

異世界の魔術師による言語翻訳が為され、インターネットを通して世界中へと歌声が広がっていく。


その場にはいない、配信の映像であったとしても。スピーカー越しに聞こえる音声であったとしても。

この歌声を聴き、このパフォーマンスを見た人は皆、彼女らに目を惹き付けられているに違いない。今まさに戦線の矢面に立っている俺ですら、一瞬全ての意識を奪われてしまったのだから。


ディアナと、アイリスと、ルナちゃんのライブには、それくらいの強烈な引力と魅力があった。


三人で合わせて歌うのはこれで僅かに二回目だ。リハーサルどころか、軽い打合せすら満足に行えていない。更にダメ押しとばかりに、最終決戦の相手である神が、頭上で文字通りの鉄槌を食らわせんとしている。


しかし。いや、だからこそ、と言うべきなのだろうか。


熟練のアーティストでさえ気後れしてもおかしくないほどのプレッシャーを全身に浴びながらも、彼女たちのパフォーマンスは精彩を欠かない。

それどころか、その歌声と、ダンス中の指先一本にさえ、秘められる意志が殊更に強くなっているのが分かる。


小鳥の物語を紡ぐ歌声は中盤へ差し掛かり、曲調は下降し、どこか不安感を煽る音階へと変わる。


……その、見ている者全てに伝わる意志が、無言のままに理解出来る心意気が……みんな(・・・)の心を、一つにする。


配信画面のコメント欄が、目まぐるしい速さで流れ去って行く。しかしその内容は一律だった。


何処から伝わって始まったのか最早追いきれないが、顔文字を組み合わせた、ライブ会場で振るわれるサイリウムの形。その中で時折、様々な国の言語での感嘆の言葉などが流れていく。


一見しただけで一丸となっているコメント欄の様子を把握した俺は、傍らの桜髪の少女と視線を合わせ、頷き合う。


ディアナ達の旋律はサビへと突入した。一気に上がり調子のビートへと転じ、疾走感のあるパートにコメント欄が限界を超えて湧き立つ。


最高潮の盛り上がりを見せる中、一瞬のタイミングで俺の目線と交錯した三人の少女らの瞳が、言葉が無くともその胸中を訴えてくる。


――さあ、今だ、と。


隣の相棒の手を握っていた左手に、力を込める。小さな手が、握り返してくるのが分かった。


俺は、瞬時にその身を短剣へと変じさせたリラと共に、圧巻のパフォーマンスが披露されている三人のアイドルの下へ向けて駆け出した。

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