星を掛ける⑨
『篠崎悠葉!』『ガキィ、まだ生きてるみてェだなァ!!』
ディアナの名乗りと時を同じくして、裏方の作業エリアに着地した俺を、スマホとノートPC内でアバターを動かす、アーツとハーシュノイズの声が出迎える。
二人に頷いて返すのもそこそこに、俺はメイン作業PCである、赤上さんの操作するPCのモニターを覗き込んだ。
「どう、ですか!?」
「篠崎君! 無事で何よりだ……! 説明するよりも、見てもらった方が早い!」
赤上さんが、腰かけていたキャスター付きの椅子を引き、俺をモニターの前に誘導する。
モニターには複数のウィンドウが同時に開かれており、その内の二つに、現行しているライブ配信の視聴画面と、クリエイターチャンネルのホーム画面が映し出されていた。
俺は、視聴画面の『約20万人が視聴中』の文字と、ホーム画面の『登録者数74.2万人』の文字を見て、右手でぐっと握り拳を作る。
「たった今のディアナ君の登場で、数が一気に増大したようだ。流石だな……うちのアイドルたちは」
「ええ……ええ! 当然ですよね!」
祭賀さんのその呟きに、全力で頷く。
無論、物珍しさだけで観に来ている人も少なくないだろう。どういう仕掛けで同時翻訳しているのか、とか、たった今現れた銀白の少女の狐耳は本物なのか、とかが気になって、ライブそのものを楽しみに来てはいない人だっているに違いない。
でも、そうだとしても、一度彼女たちの姿を、歌を、パフォーマンスを目にしたら……そんな人たちだって、きっと夢中になる。その確信がある。
上空には、創星神の呼び出した惑星、エーテルリンクが、こうしている今もなお地球へと近付いてきている。コメント欄を遡ってみると、ライブを視聴している人たちもどうやら、今地球は未曽有の災害に見舞われようとしている、ということを何とはなしに理解しているようだった。
しかし、そんな誰もが抱いている漠然とした不安を癒すかのように……まるで普段通りの掛け合いを、MCを続ける少女たちの姿が、視聴者の視線を釘づけて離さない。減るどころか、増え続ける同接数がそれを如実に物語っていた。
ディアナ、アイリス、ルナちゃんの三人は、実に何気ない様子……放課後にファーストフード店でだべる女子高生のようなふわふわした空気感で、いつもと変わらない声と表情で、三人がユニットを組むことになった経緯なんかを喋っていた。
ルナちゃんとアイリスが幼少期の友人だったこと。ひょんなことから再会し、再び距離を縮めたこと。そのときルナちゃんが、アイリスの友人であったディアナとも知り合い、仲良くなっていったこと、なんかをだ。
そして少女たちは、ディアナが告げたユニット名にも触れる。
俺が妄想染みて考えた、ディアナとアイリスのユニット名、空に輝け。
これが、なんとルナちゃんも加えた三人のアイドルユニットの正式名称として、祭賀氏と赤上さんに採用されてしまったのである。




