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星を掛ける⑤

「篠崎クン……キミは、言ったね? アイドルがいるから日々を生きていける。彼女たちという存在が、形無き力を与えてくれるのだと」


創星神が、思い出したように平静な声音で語り掛けてくる。

記憶の彼方へ忘れ去ったのではなかったのか、俺の名を呼び、生徒に教える教師のような優しい口調で。


「それは、私に対する宣戦布告だ。私の生きてきた意味を否定するものだ――死という概念(私の恐怖)を克服することと、同義だ」


広がり行く白い渦が、俺たちの背後のそれと同じように、ここではないどこかの宇宙空間を映し出す輪の形へと変じた。いや、繋がったのだ。どことも知れぬ銀河系。その宇宙空間と。


「けれど、私はそんなものは認めない。それは、私が今日まで生きてきた苦労と努力の日々を否定することだから。私自身を否定することだから」


創星神の背後の大穴に、巨大な影が差す。

巨大、というだけでは到底形容し得ない、途轍もなく甚大な質量が、その顔を覗かせる。


惑星だ。


「でも」


地球より、二回りほどは小さいだろうか。その表面の九割ほどを占めるだろう広大な海の中に、ぽつんと一つ、細長い大陸が浮かんでいる……どこかで、見たことがあるような?


そんな、美しい青色の惑星と、俺たちの故郷である惑星とが、創星神と俺たちを間に挟み、二つの白い穴を通して……正面から、見つめ合う。


「キミが、キミたちが、あくまでその我を貫くのなら……証明してごらんよ。この、形持つ死を前にして!」


そこで、その言葉を耳にして、ようやく気付く。


こいつは、この金色の神は――あの惑星を弾丸に、地球に衝突させるつもりなのだと。


あんな、巨大な星が隕石となって地球に激突したら……恐竜が絶滅した一説とされる、小隕石による氷河期など比じゃない。地球という星そのものが粉々に砕け散ってしまうだろうことは、想像に難くなかった。


「ッ、――!!」


気付き、食い止める至極の心技を放つべく、一歩前へ踏み出して……そこで更なる事実に気付いた内なる相棒が、全身を強烈に膠着させる。


『いけません、マスター! あれは、あの星は……!』


ディアナの絞り出した言葉の先を、俺はとっさに理解した。

俺自身は見たことが無いのに、何故か既視感を覚えたのはそのせいだったのか。


「なんだ、気付いちゃったのか。分からないままに破壊してくれれば、それはそれで私の望み通りの結末だったのにな」


創星神が笑みを浮かべる。


そうだ、忘れてはいけない。あの金色の女性神は、二つの世界の力を得た超常の神なのだ、ということを。そう、彼女が神たる権能を有している世界(ほし)は、地球と……もう一つ。


俺の中のディアナの記憶と、先日、天空神アーツから伝え聞いた過去の話とが、目の前に現れた星の名を気付かせる。


あの星は、創星神が地球を砕く弾として呼び寄せた、あの惑星は――エーテルリンクだ。

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