色彩無き日々-
家までの道、夕焼けに赤く染まる道を一人歩く。
途中、思いついて公園に寄った。鉄棒をしていてケガをした、という言い訳にするのに、服が汚れていないことに気付いたからだ。適当に地面を転がって汚し、それらしく繕っておく。
そんな姿に仲間意識でも沸いたのだろうか。野良猫が近くに寄ってきて、同じように地面に横になって体を伸ばし始めた。そんな姿に荒んだ心が少しだけ癒され、思わず笑顔になってしまう。
『へー。そういう風に取り繕うんだ。小学生のくせに賢しいったらないね。ま、それを言ったらバレるのも気にせずにケガさせる相手も相手だけど』
「……え?」
い、今、誰かいた? まずい。下手に声をかけられて、家に連絡でもされてしまうと困る。
焦って起き上がるが、夕暮れ時の公園には俺以外の人の姿は無かった。いるのは俺と、小さな猫の二人だけだ。
聞き間違い……気のせい、だったのかな。
起き上がり、改めて周囲を見回したあと、猫に別れを告げて再び家路につく。
白亜の建物の階段を上り、自宅の扉を開け、帰宅を告げる。
「ただいまー……」
「悠くん、お帰りなさーい――って、どうしたの、その恰好!? ああ、ケガも!!」
居室から顔を覗かせた母が、慌てふためいて駆け寄ってくる。予め用意しておいた通りに経緯説明を行うと、素直に納得してくれたようで、ひとまずはお風呂に入るように促された。
湯船に浸かり、身体を洗い、自ら汚した身体の砂や泥を落とす。
時折、思い出したように額の傷が痛み、自分が余計な苦労を負っているのではないかと告げているようで、思わず溜め息が漏れてしまった。
入浴を終え、母による傷の手当てを受けた後、細かい追及を受けそうになったので、「宿題があるから」と言い張って自室に戻った。宿題があるというのは本当だし、ボロが出る前に退散するのが正解だろう。
「えーっと、あれ……おかしいな」
背負っていたランドセルを開いて中を探り、文房具を取り出そうとしたが、筆箱が見当たらない。
少しだけ考えて、おそらく、またクラスメートの誰かに隠されたのではないかとアタリを付ける。実行されたのは、今日最後の授業であった体育の時間だろう。
くそ……この間新しいものを父に買ってもらったばかりだったのに。怪しまれないように用意してもらうのは結構大変なんだぞ……
勉強机でも溜め息をついて、引き出しから、以前に購入してあった鉛筆を取り出す。ダース単位であるし、何より自宅であるからこれを無くす心配はしなくていい。
明日はここから筆記用具を持っていこう。休み時間に筆箱を捜さなきゃ……
やがて来る憂鬱な時間を思って肩を落とした後、俺は宿題のプリントに筆を走らせ始めた。




