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独白-

……ここは、どこだろう?


つい先程まで自分が何をしていたのか、記憶が淀んでいて判然としない。

記憶の糸を辿ろうとしている内に、視界が無間の闇に満たされているのが、瞼が閉じたまま開かないせいだと気付いた。瞼だけに限らず、全身も満足に動かせない。


肌に触れる感触から、何か液体のようなものに頭から爪先まで浸かっているようだと予測する。

不思議なことに呼吸の苦しさは無い。眠る寸前のような安らかさで漂っている。


一糸纏わぬ姿でゆらゆらと浮かぶ自分の周囲。液体と、それを擁する容器の向こう側で、誰かの話し声が聞こえる。


『……形になった――これだけ――四百体もの――』


『しかし――見合うだけの性能を――』


『余分は無い――扱いには気を付け――可能な限りの実験を――』


大勢の男性……年齢層は様々だと思われる複数人の話し声が、液体越し故か途切れ途切れに伝わってくる。自分のことについて話しているようだが……


『――では――初期実験を――』


声の一つがそう呟いたのち、機械音が鳴り、自分の身体を包んでいた液体が足元から抜けていく。

容器の内側から強い風が吹きつけ、濡れた全身を乾かし、次いでガスのようなものが噴出し、不可視の力で全身に衣服を纏わせていく。


ガコッ、と容器が開閉したらしき音が聞こえ、ゆっくりと目を開く。


自分に向けて視線を注ぐ……十人余りの研究者然とした男性たち。


「出てきなさい」


明瞭に聞こえるようになった声に従い、容器の中を出る。高いヒールの靴に慣れていないのか、危うくよろけそうになるが、どうにかバランスを保ち、床に降りることが出来た。


どうやら自分は随分と小柄だったらしい。見上げられていたところから一転、己を囲む研究者を見上げる。はらりと額に落ちた銀の前髪が視界の端に映った。


「被検体番号400(フォーティゼロ)、ディアセレナ。君を指す番号であり、名だ。どちらかを呼ばれたら応じるように」


「…………」


「どうした? 返事をしなさい、ディアセレナ」


「……あ。はい、承知、致しました……」


自分のことを、言っていた、のか。


何故だろう。一瞬そうだと分からなかった。状況的にもそれ以外考えられないのに。

不審な顔で見下ろしてくる研究者らを前にしたまま、自分の弱々しくか細い手に目を落とす。


自分は……()、いや、()は、いったい……?


「……可動直後で完全には覚醒していないのか。しかし時間が惜しい。我々には余分な時間も、資源も無いのだから」


「ついて来なさい、ディアセレナ。君には使命がある。この月の魔道工房(ムーンファクトリー)における秘蔵の響心魔装(シンクロ・デバイス)として」


「いずれ我らが、あの科学の発展を理解しない国……トレイユに反旗を翻す時の切り札となるための、な」

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