神の衣を纏いて⑪
「……いいよ、認めてあげる。今のキミたちは、アルトの意志を継ぐに足る……私と同等の神威持つ、敵だっていうことをね!」
創星神が、見覚えのある輝きの宝石球を頭上に放り投げた。それを触媒に四方八方から、隕石と定位魔法の雨あられが迫り来る。
吹き荒れる積乱雲の束を、湧き起こる溶岩を、降り注ぐ隕石を。
両脚とそこに付き従う刃翼を振るいに振るって、闇夜神路という名の宇宙空間を放ってやり過ごす。
その行為はつまり、『それらの魔法が存在しない宇宙空間』の壁を作り、攻撃魔法の進行を阻んでいるわけだが、それはどこまで行っても防御にしかならない。ジャンケンで相手の手を見てから、確実にあいこになるように後出ししているようなものだ。
神装神衣による真の能力の開花がなければ、そもそもその防御すら成し得なかったのだろうが……闇夜神路で創星神の魔法を防ぎ続けるだけでは状況は変わらない。
だから。
――一瞬の切れ目。刹那のタイミングで露出した、創星神へと向かう魔法群の隙間。
そこを狙い撃つ。
「闇夜を纏う――」
『――黒刺夢槍!』
天空神との戦闘により学んだ上位心技。突き出した右足と、そこに付随する二枚の刃翼による計三本の黒槍が、一直線に創星神の下へ向かい闇色の空間を駆け抜けた。
飛翔する黒槍の内二本が、創星神の前に突如出現した赤々とした大地の目立つ惑星に阻まれ、その星共々霧散する。俺たちの行為と同様、創星神も『自己を害する心技を阻む惑星』でも創造したのだろうか。
辛うじてその防御を突破した最後の黒槍が、創星神にかなりのところまで肉薄する――
かに思われた、瞬間。
創星神の背後から突如飛来した純白の物体が、残像すら残さない程の速度で黒槍へ衝突し、僅かに拮抗する間もなく貫通した。中心からブチ抜かれた黒刺夢槍が、あえなくその場でかき消える。
白の一閃はそのまま勢いを緩めることなく、先刻の黒刺夢槍とは対照的に、俺たちの方へと真っ直ぐ向かって来た。
両足の後ろに控える四枚の刃翼を迎撃に放つも、縦横無尽に跳び回る純白の物体に易々と弾かれ、瞬く間に四枚の刃翼全てが両断されてしまった。創星神が遠隔で操作しているらしく、一見無駄の多い忙しない動きながらも、付け入る隙が無いほどのスピードがそれを補って余りある。
阻むものを退けた物体が、そのままの流れで再び狙いを俺たちへと定める。
間近に迫り、そこに秘められた神威の圧を肌で感じ取った俺は、無意識かつ即座に夜剣を右手に顕し、物体の刺突を防御していた。そうしてようやく、雷の如く疾った白い一閃の正体を目視することに成功する。
それは……創星神が、この神界に至るために使用した、白光を纏う半透明の巨大な鍵だった。




