神の衣を纏いて⑦
「――我が名は創星神。創星神エンデ! 我が永劫の叡智の前に、疾く、悉く、消え果てよ!! ニンゲン!!!」
掻きむしった前髪の奥。轟いた大声に呼応するかの如く、鋭い眼光がぎろりと見開かれたかと思うと、地母神の周囲を取り囲んでいた書籍の山が吹き飛んだ。同時に、周囲に浮かんでいた星々の輝きの全てが、その大小を問わず、一直線に地母神の元へ集約する。
直後、眩いばかりの輝きが解き放たれ……立ち上がった地母神の身体が、黄金色の光を放った。
全身は服と体の境目が分からなくなる程の輝きで包まれ、毛先の一本一本に至るまでが、星々と同じ金色の光で彩られる。三つ編みにまとめられていた髪は解かれ、無造作に背後で広がり、その背の後方に、俺の頭上に浮かぶものに似た、しかし遥かに巨大な後光の円環が二重に展開された。
地母神……いや、創星神と自身を語った女性神の眼光が俺一人に降り注がれ、神装神衣状態であるにもかかわらず、心臓をぎゅっと握り潰されそうになるほどの萎縮感が襲いかかってくる。
あれが、本来の神という存在の姿なのか。真の神が持つ威光ってやつなのか。
「さっきは手を抜いて悪かった。とはいえまだ私自身の力量も不明瞭なままだ……もう少し小手調べとさせてもらおうか」
一糸纏わぬ裸体にも見えるシルエットの創星神が、ゆらり、と右手を持ち上げた。人差し指が伸ばされたまま、音も無く横に引かれると、俺の周囲を埋め尽くす物量の魔法陣が出現する。
ディアナの知識と、神位レベルに達した魔眼の能力が、魔法陣に宿る魔法の種類を見抜く。
――石充境・破筍。
創星神が式句を唱えることも無く、現れた無数の魔法陣から見たことも無い光沢の石筍が次々と突き上がった。
ただの岩を固めた石柱ではない。鉄、いや、金剛石か!? この光り方! 勿体ない!
俺たちを仕留めるためだけに費やされる破格の魔法群。その全てを、視界に捉えた魔素の多寡で判断した順序で回避する。
そのまま泳ぐように躱し続ける。発動される魔法のラインが常に美しいまでに連続しており、一定に集中していない。まるで回避されることを前提にしているかのような攻撃の仕方だ。
その懸念がどうしても払拭出来ず、反撃や完全な回避には移らず、動き回る姿勢を保ちながら創星神の様子を窺い続けた。
すると。
「やっぱりこの程度なら余裕か。じゃあ、これでどうかな?」
腕組みしていた創星神が、金色の人差し指を再びピンと立てた。
満遍なく展開され、金剛の石筍を発動させ続けた魔法陣と、その中心付近を飛び回っていた俺。それら全てを呑み込む漆黒の孔が、二重に交錯した形で出現した。




