表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/673

相棒って本当に頼りになる⑫

「これは、限定魔装形態リミットデバイスモードの性質上、避けられない結果なのです。本来、私ども自身が魔装そのものでありますので」


なるほど。つまりこういうことだ。


響心魔装(シンクロ・デバイス)であるディアナたちは、契約した主と響心(シンクロ)し、主から心素(エナ)の供給を受けることで、魔装形態(デバイスモード)へと転じて比類なき能力を発揮できる。


その時は、魔法武器と化した彼女たちをマスターが、言わば装備・使用している形になるわけで、己の全身を一〇〇パーセント武器として構成することになる。


反対に、平常時は一〇〇パーセント人間と同じ姿であるわけだが、単独で魔装としての能力を行使するには、人間の姿でいるために回しているリソースを、魔装の方にも振り分けなければならない。


そのリソースが、全身からおそらくまんべんなく回収、再構築された結果……若干の武装と、幼い身体が出来上がるということなんだろう。


ディアナによれば、遠距離に波動を放つ闇夜神路(リ・ディアセレナ)などの能力も、出力が五分の一ほどに落ち込むという。あくまで緊急時や、補助的な能力に過ぎないのだそうだが……


「それはまた……ずいぶん」


――人間離れした能力だ。


口まで出かかっていた言葉を、そのまま言葉にしないほうが良い気がして、俺は口を(つぐ)んだ。


夜剣を解除したディアナは、再び腰を下ろして何個目かのピトーを頬張っている。気に入っているらしく、頭上の狐耳がピコピコと楽しげに動いている……よかった。気付かれなかったらしい。


確かにこれまでの彼女は、自身を剣にしたり鎧にしたりと、普通の人間にはありえないことを数多くしてのけた。そのどれも、俺は不思議と『そういうものなんだ』と受け入れていた。


だけど。


僅か一日ばかりだが、ディアナとの記憶が思い返される。


初めて出会った時の凛とした表情。

トレイユ城で兵士たちに囲まれた時の不安そうな表情。

客室で人心地着いた穏やかな寝顔。


ついさっきなんて、ルナちゃんのダンス真似てたしな。


あの魔術師サンファも、ディアナの、響心魔装のことはまるで物のような言い方をしていたが、とても俺にはそうは思えない。


(彼女はきっと、俺と何も変わらない。些細なことで喜び、傷つく、普通の少女なのだと思う)


言われない批判や悪意に傷ついた俺のように――


そこまで思考して我に返る。やれやれ、このネガティブ思考は直らねーな。


ともあれ、異世界人で、不思議な能力を持ってたとしても、ディアナは俺の頼りになる相棒だ。


そんな相棒を傷つけるようなことは、言っちゃだめだよな。マスターとして。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ