相棒って本当に頼りになる⑫
「これは、限定魔装形態の性質上、避けられない結果なのです。本来、私ども自身が魔装そのものでありますので」
なるほど。つまりこういうことだ。
響心魔装であるディアナたちは、契約した主と響心し、主から心素の供給を受けることで、魔装形態へと転じて比類なき能力を発揮できる。
その時は、魔法武器と化した彼女たちをマスターが、言わば装備・使用している形になるわけで、己の全身を一〇〇パーセント武器として構成することになる。
反対に、平常時は一〇〇パーセント人間と同じ姿であるわけだが、単独で魔装としての能力を行使するには、人間の姿でいるために回しているリソースを、魔装の方にも振り分けなければならない。
そのリソースが、全身からおそらくまんべんなく回収、再構築された結果……若干の武装と、幼い身体が出来上がるということなんだろう。
ディアナによれば、遠距離に波動を放つ闇夜神路などの能力も、出力が五分の一ほどに落ち込むという。あくまで緊急時や、補助的な能力に過ぎないのだそうだが……
「それはまた……ずいぶん」
――人間離れした能力だ。
口まで出かかっていた言葉を、そのまま言葉にしないほうが良い気がして、俺は口を噤んだ。
夜剣を解除したディアナは、再び腰を下ろして何個目かのピトーを頬張っている。気に入っているらしく、頭上の狐耳がピコピコと楽しげに動いている……よかった。気付かれなかったらしい。
確かにこれまでの彼女は、自身を剣にしたり鎧にしたりと、普通の人間にはありえないことを数多くしてのけた。そのどれも、俺は不思議と『そういうものなんだ』と受け入れていた。
だけど。
僅か一日ばかりだが、ディアナとの記憶が思い返される。
初めて出会った時の凛とした表情。
トレイユ城で兵士たちに囲まれた時の不安そうな表情。
客室で人心地着いた穏やかな寝顔。
ついさっきなんて、ルナちゃんのダンス真似てたしな。
あの魔術師サンファも、ディアナの、響心魔装のことはまるで物のような言い方をしていたが、とても俺にはそうは思えない。
(彼女はきっと、俺と何も変わらない。些細なことで喜び、傷つく、普通の少女なのだと思う)
言われない批判や悪意に傷ついた俺のように――
そこまで思考して我に返る。やれやれ、このネガティブ思考は直らねーな。
ともあれ、異世界人で、不思議な能力を持ってたとしても、ディアナは俺の頼りになる相棒だ。
そんな相棒を傷つけるようなことは、言っちゃだめだよな。マスターとして。




