神の衣を纏いて②
機材は全てセッティングOK。
アイリス、ルナちゃん、祭賀氏らの打合せもOK。
サポート予定の、アーツ、ハーシュノイズも準備OKだ。
全員が頷くところを改めて流し見てから、最後に隣の相棒に視線を移す。
相棒――ディアナもまた、みんなと同じように、微笑みながら首肯し、意思を示してくれた。
そんな皆の視線を一身に受け、俺はディアナへ右手を差し出す。
相棒は再びコクリと頷くと、言葉も無く紅の双眸をそっと閉じた。その身が夜色の粒子へと変換され、俺の全身を包み込んでいく。
いつもならここで、『魔装形態、月神舞踏への変換が完了しました』というディアナのアナウンスが脳内で流れるところだが……今は、その先を目指す時だ。
全身を覆う粒子を、その身の内側へ。
肉体から更に内側、精神世界の奥底へ。
もっと、もっと奥深く。己の魂の最奥へ。
……ディアナの鼓動を感じる。細かな粒子となっても絶えることの無い、形無くとも褪せることの無い、俺たち二人の繋がりを、感じる。
『そうです。それでいい。それこそが、貴方達の神装神衣――』
夢心地にも似た遠近感のあるアーツの声を耳にしながら、二人の境界を取り払っていく。
呼吸が重なる。意識が重なる。
心が、重なる――
――次の瞬間、ゆっくりと目を開けた。
瞬時に、それまで知覚することの無かった無数の情報が視界から大量に飛び込んできて、一瞬困惑する。
分かる。さっきまでとは違う。今の自分が、全く別次元の存在になった自覚があった。
脳内の情報を取捨選択しつつ視線を落とすと、腕も、胴も、足も、星の光を内包した夜色の輝きに染め上げられていることが分かる。
これが、神装神衣。
振り向く。こちらを驚愕の表情で見つめている全員の視線とかち合った。
アイドルらしからぬ大口を開けて固まっている金髪の少女が、わなわなと震える右手で指差してくる。
「あ、アンタ、それ……あれ? ディアナ? ユーハ? ……今どっちよソレ!?」
……? 何を言っているのか、よく分からない。
二人一緒になってしまったから呼称の仕方に迷いがあるのだろうか。
「すごい……悠くんにも見えるし、ディーちゃんにも見える。遠目に見たら性別も分からないかも」
その発言でようやく、現状の自分の容姿が変化していることが判明した。
どうやら神装神衣状態だと、男性と女性であったが故なのか、容姿の性別が中性に近付くらしい。
その後に続いた「あ、でも目の形は悠くんだね。髪の色はディーちゃん寄りかな?」との言葉によれば、紅の魔眼を備え、銀か灰色の髪色をしているようだ。
他の面々の話も統合すると……
右半分の頭上に、天使の輪をギザギザにして半分に割ったような形の光輪が浮かんでおり。
ふくらはぎか太もも辺りから、翼のようにも見える夜色の刃が左右二枚ずつ展開されており。
両方とも紅と思われた双眸は片方が黒の、左右非対称の配色をしているらしい。
あまりにも面影が無さすぎるのではないだろうか。




