神の衣を纏いて①
翌朝、俺は夜明けと同時くらいに目覚めた。
寝床代わりに割り当てられた会議室の片隅で身体を伸ばし、いつも通りにルナちゃんのナンバーを小さめの音量で流しながら身支度を整えていると、事務所の面々が少しずつ顔を覗かせる。
最初に現れたのは祭賀さんだった。「作業は恙なく進んでいるよ」と、昨夜依頼した件の進捗報告ののち、再び事務所へ戻っていった。赤上さんの手伝いに行ったのだろう。
次に、日が充分に上った頃合に顔を出したのは女性陣。アイリスとルナちゃんがどこか眠そうな表情をしていた。ディアナを交えたガールズトークはそれなりに遅くなったようだったし、それも仕方ない。リラは……いつも眠そうな表情なので、カウントしていない。
ディアナ、アイリス、ルナちゃんの三人は、おはようの挨拶だけ短く告げると、リラとアーツの映るスマホを残して給湯室へと向かった。有り合わせのもので朝食を用意してくれるらしい。
残されたリラとじゃれ合って――髪を梳いたり、昨夜どんな話をしたのか聞いたり――いると、おにぎりとみそ汁入りのお椀が乗ったお盆を抱え、三人が戻って来た。同じタイミングで祭賀さんと、ハーシュノイズの映っているノーパソを抱えた赤上さんも加わり、全員で朝食と相成った。
「赤上さん。大丈夫、そうですか?」
「ああ、さっきどうにかチャンネル開設までこぎつけたよ。試しに既存のMVもいくつかアップして確認も出来てるし、もういつでも使えるようになってる。あとは告知だな。瑠奈」
「はーい。ご飯食べたらSNSで呟いときますね。ふふ、こういうのは初めてだし、ちょっと緊張しちゃうかも」
「だだだだーいじょうぶよルナ。あ、アタシってば、ゲリラライブにかけては右に出る者が無い、歴戦のアイドルなんだから。いつも通りにやればアタシたちなら平気平気! ……へいき」
「……かーさま、おわん……空っぽー……」
「ほう、アイリス君も緊張することがあるのだね。それも、既に空のお椀を傾け続けるという、あからさまな形で」
「あ、アイリス様。お代わりをお持ちしましょうか?」
『……ホンットにこいつら、この後あの地母神と一戦やらかす気でいんのか……?』
『これくらいでこそ、彼ららしいのでは?』
……という感じの団欒(?)ののち、再び各自解散し準備を行う。
俺は祭賀さん、赤上さんと一緒に、屋上で機材のセッティングを行った。
同じ屋上の別の空間では、女性陣が最後の調整を詰めている。
そして、食事が終わってから一時間ほどのち。
全ての準備が整った。




