表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

617/673

夜会話⑮

「はいはい、気を付けますよ。ところで……どしたんディアナ。そんなに耳萎れさせちゃって」


「いえ、その、何と申しますか。腫れもの扱いされることも、距離を置かれることも覚悟でおりましたのに、拍子抜けと言いますか。肩透かしを食らったと言いますか」


「え? なんで」


「……だって、私は。人間でも、まともな魔装(デバイス)でも、なくて。チキュウの人にとっても前例の無い、得体の知れないもの、ですから……」


「おお……ディアナにこんなこと言う日が来るとは思ってなかった」


「は、はい……?」


馬鹿(ぶわぁか)ですね、ディアナさんは」


「は、はい!?」


「見くびってもらっちゃあ困りますよ。だいたい、これまでの旅の中で、俺が一度だって、ディアナの種族がどうかなんて気にしたこと、ありましたか? ないでしょーが」


「それは……その通りですが――ひゃわっ!? ま、マスター、何を!?」


「やかまし。そーんなことを言うおバカはモフモフの刑だ。大人しくモフられなさい」


「み、耳は敏感なのですが……っ、ん!」


「おおう!? ご、ごめん。調子に乗った」


「ハァ、ハァ……い、いえ……」


「あー……コホン。とにかく、俺は何も気にして無いし、ディアナはディアナなんだから、ディアナ自身も何にも気にすることなし! オッケー!?」


「は、はい」


「……釈然としない顔してんね。そうは言われても自分が納得できない、って感じ?」


「い、いえ、そのようなことは」


「……よし。ディアナ、ちょっと散歩しようか」


「はぁ。どちらへ?」


「んー、上かな。月神舞踏(ディアナアーツ)よろしく」


「はい」


「よし。じゃ、行こうか――」


『……見事な星空ですね』


「そうだな。この町はそこそこ都会だけど、それでも数百メートルも上空まで来れば、満天の星空が見えるもんだ……こんな空の下だったよな、ディアナと初めて会ったのは」


『――はい。あの日のことは、何もかも鮮明に覚えております。私の閉じこもっていた容器に触れてくれたマスターの熱も、差し伸べてくれたマスターの手のことも』


「はは、そう言われると恥ずかしいな。あの時はボロボロだったし……あれから、まだ二ヶ月そこらしか経ってない。正直、俺はまだディアナのことについて、知らないことの方が多いって思ってる……でもさ、それとは逆に、知ってることもあるんだ」


『私について、知っていること、ですか?』


「うん。生真面目で、いつだって冷静で、それでいて外見相応の好奇心が覗くこともあって……アイドル、白風瑠奈に憧れる一人の女の子。それがディアナ……って、偉そうに言っといてこれっぽっちで悪いけどな」


『…………』


「でも、それらは間違いなくディアナ自身のことだと俺は思ってるし、ディアナが人間でも、魔装でも、他の何であっても変わらないことだって、信じてる」


『マスター……』


「もう一度言う。俺は、ディアナが何であったって気にしないし、それはこれからも変わらない。大事な相棒(パートナー)で……俺の――」


『――響心魔装(シンクロ・デバイス)、ですから』


「……はは、そう。その通り! それでこそディアナだ!」


『はい。申し訳ありません、マスター。貴方の響心魔装ともあろう私が、気弱なところをお見せしてしまって……もう、大丈夫です。初心と、一番大事な心を取り戻せました。マスターのお陰です』


「いいよ。んじゃ、そろそろ戻るかな」


『……いえ、マスター』


「ん?」


『もう少し。もう少しだけ、この星の海を泳いでいきませんか?』


「……うん。勿論」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ