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夜会話⑭

師匠は、この時初めて心の底からサンファを褒め称えていました、と遣る瀬無いような顔つきでアーツは言う。


育成中のサンファへの言葉の全てが空虚なものであったと……あくまで自分のためであり、サンファ自身を評価したが故の言葉ではないと分かっているアーツだからこそ、それが分かるのだろう。


サンファの、地母神を捜すために、行方を知るだろうアーツのいる神界へと向かうために想像した転移魔法陣。結果としては失敗に終わり、その魔法陣の転移先は地球であったが、地母神はこれを利用した。


地球人を召喚し、第三の力である心素(エナ)を集め、正しく神界へと至れる魔法陣を造ろうとサンファが奮起する一方で、地母神は早々にエーテルリンクから手を引いた。アーツにも気付かれないよう、とっておきの隠蔽魔術を起動したうえで、サンファの転移陣をかすめ取り……地球へと渡ったのだ。


『それからの師匠の動向は、貴方も知る通りです。今日この日に彼女は、念願であった地球の神へと昇華し……今頃は、不老不死への手法を探りに探っている最中でしょう』


「……なるほど、ねー……」


……これで、アーツの話は一区切りついたようだった。何度も頭の中で話の内容を反芻しながら少しずつ理解を進めていく間、数分ばかり無言になる。


少しの沈黙の後、俺の用意が整ったタイミングを見計らって、ディアナが小さく口を開いた。


「アーツが地母神の不在に気付いたのは、サンファ氏とほとんど同時くらいでした。いえ、あの方が狂ったように乱れる様を見てようやく気付いた、と言っても良いのかもしれません。不在なことに気付いたまでは良いが、どこに向かったのかは、その時はまだ分からなかった。けれど、何らかの対策は講じなければならない」


「…………」


俺は無言で待った。その時が訪れるのを。

語り手が移った、ということは、ここからはディアナの話のターン。


「サンファ氏による召喚者の心素を集めるという発案に先んじ、かつ、万が一の事態となった時のために、神と成った己の力を十全に発揮出来る器が必要だったのです。そのために、アーツは……私を造った。異世界の技術をも取り込んだ地母神にも劣ることのない、唯一無二・最高最適の器として」


そこで言葉を切り、浅く呼吸した銀白の少女が、続きを出そうと口を開きかけ、すぐにまた閉じた。

一瞬の躊躇いが顔に滲んだディアナだったが、意を決した表情で、深呼吸で吸い込んだ息と共に声を発する。



「……私、は。私は、アーツの――」



――――――――――――――――………………


―――――――――――…………


――――――………


―――……


―…



「はー、凄いな。いやもう、何て言うか…………凄いな」


『……思っていたよりも驚きが無いようですね。その語彙の少なさからすると』


「まあ、ちょっとは予想してたから……なんか不機嫌そうだな。もしかして、腰を抜かすくらい驚くもんだと思ってたのに予想が外れた?」


『いいえそのようなことは全く、一切。根も葉もありません。 ……ともあれ。それだけの胆力が付いているのであれば、問題無いでしょう。しかし、努々(ゆめゆめ)油断することの無きよう。師匠は必ず、この事実を利用して来るでしょうから』

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