相棒って本当に頼りになる⑪
洞穴の外が暗くなってきた。ディアナに声をかけ、焚き火をつけよう、と提案すると、指先に火を灯してあっという間に点火してくれた。
俺が称賛の言葉を述べると、「魔法とも呼べないほどの技術です。マナの宿るエーテルリンク人であれば誰でも使えますよ」とのこと。料理とかの生活技術と同じレベルのようだ。
薄暗かった洞穴を、炎が柔らかく照らし出す。
焚き火を囲んで、もう四本目になるキナの皮を剥いている時にふと気づいた。
「ディアナ。お前、これどうやって採ってきたんだ?」
これ、とは、キナをはじめとする果物たちと、焚き火用の薪のことである。
なにせ、今俺たち二人がいるのは峻険どころかほぼ直角に切り立った山肌に、無理やり穴をあけて掘った洞穴だ。上に登るにも下に降りるにもかなりの高度がある。素手での昇り降りはまず不可能だ。
そんな環境で、これだけの荷物を抱えてどうやって出入りしたのだろうか。
問われたディアナは、咀嚼途中だった薄いピンク色のトマト型の果物――ピトーというらしい――を飲み込んでから、小さな口を開いた。
「はい。マスターからお借りしていた心素を少々使わせて頂きました」
「ああ、移動中の残りがあったのか?」
「その通りでございます。その心素を用い、限定魔装形態下で月神舞踏を発動させて山へと下りました。必要な物資を回収後、同じ手はずで戻った次第です」
「りみっとでばいすもーど?」
「魔装形態時の能力を一部のみ開放し、単独である程度駆使できるスキルです。事前にマスターから心素を受け取っておく必要がありますが、私一人でも、月神舞踏や夜剣を扱うことができるのです」
ディアナはそう言って立ち上がると、右手を少しだけ前へ伸ばした。
「……限定魔装、発動」
その言葉に応えるかのように、彼女の身体が夜色の帯を纏った。いや違う。これは、ディアナの身体から帯が放出されている?
宙へと舞い出た帯はディアナの伸ばす右手に集まり、やがて夜色の短剣を成した。
「ふぅ……やはり、私一人ではこれが限界ですね」
そして、夜剣の完成と同時に……ディアナが、縮んでいた。
何歳か若返っている。明らかに幼くなっている。今はもう十歳そこそこなんじゃないか?




