相棒って本当に頼りになる⑩
小さな山と積まれた果物群にディアナが近づき、いくつかひょいひょいと抱えて戻ってきた。
「それではこちらをどうぞ」
「おお、ありが、とう……」
そんな彼女から差し出されたのは、一本の、見るからにバナナと同じ形状の果物。ただし、色は真緑。
地球人の知識が微妙な警告を発している。……これ熟してんのかなあ。
横目で果物の小山を見てみると、そのおよそ半分がこの果物だ。今が旬なのだろうか。
「ご心配には及びません。しっかり食せるものを選び取ってまいりました。熟す前のものは紺色なので、一目でわかりますので」
ネイビーからモスグリーンに変わるのかよ!
改めて自分がいるこの場を異世界だと認識しつつ、恐る恐る真緑バナナを受け取った。うん、皮の手触りも俺の知るバナナのそれと同じだ。
ある種の緊張に包まれながら皮を剥いてみると、なんと身まで真緑色……しかもところどころに紺色が点在してる。完熟にはほんのちょっとだけ早かったらしい。
身を目にした途端、皮を剥いたままの状態で固まってしまった。あーみるみる食欲が減退してく。
「食べたくねぇー……」
ポツリと呟く。ダメだよこれ。ハデな見た目で食べられないように自分守ってる系のやつだよ。青色の食べ物は食欲を失わせるってどっかで聞いたことあるよ。
かすかに香ってくる匂いは、爽やかな果物の匂いなのがまた悩ましい!
ぐぬぬ、と手の中の果物と睨みあっていると、見かねたディアナが俺から真緑バナナを取り上げた。
「マスター、好き嫌いはいけません。このキナという果実は、滋養強壮にも優れた、疲労回復にはうってつけの食材です。さあ、お口をお開けください。はい、あーん……」
ディアナが真緑バナナをずずいっと俺に突き出してきた。思わずのけ反る俺。
「いやいやいや一人で食える! 食えるから!」
「そのようには見えませんでしたが」
「ぐっ……さ、さっきはちょっと見た目に抵抗があっただけだから! 大丈夫! 目と鼻を瞑ればこれくらい――」
「そんな子供のようなことをおっしゃらないでください。ほら、あーん、です。マスター」
「もがっ」
次の反論を考えていたところに、半ば強引にねじり込まれた……ええい! ままよ! ここまで口に入れちまったなら一緒じゃ! と勢いに任せ、一気に一本分噛み砕いて口に頬張る。
……あ、キウイフルーツの味だわコレ。水分たっぷりで甘味もあるし、うん。普通においしい。
「お味はいかがですか?」
「……大変おいしゅうございます」
「それは何より」




