異世界召喚はいつも突然だ⑥
このペテン師! 俺の希望を聞く気なんて最初から無いんじゃないか!
そのくせに、微妙に申し訳なさそうな表情をしようとしてるところが余計に腹が立つわ!
なんだその取って付けたような八の字眉毛は! ええ!? 裏がありそうな笑顔自体は変わらないから胡散臭さに拍車がかかるだけだわ!
「うわぁ……サンファ殿、えげつないな」
「ちょっとだけ少年に同情しちゃうわ、俺」
「歩み寄りの姿勢を見せた途端コレだもんな……」
そら見ろ! 兵士さんたちもあまりの卑劣極まりない行為に思わず陰口叩き始めてるぞ。王の眼前なのに!
誹謗中傷には慣れているのか、イケメン魔術師――サンファという名らしい――は相も変らぬ笑顔のままだ。
女王サマはというと、こちらも眉間に皺を寄せた硬い表情を崩さぬまま、腕組みの姿勢で俺をにらみ続けている。
あ、これ、俺が頷かないと話進まないやつだ。
「はぁー……」
思わず溜息が出た。
ずっと口でも頭でも、叫びっぱなしのツッコミ続きだったからか、ほんのわずかな会話のやり取りをしただけなのに、心身ともに疲れ切っている。
それもそうか。さっきまでいた都会の生活圏から強制的に切り離されて、自分が唯一楽しみにしていた娯楽すら奪われて、世界救えなんてド級の無茶ぶりだもんな。
誰だって疲れるって。
……でも、ここで溜息をついていたって帰れやしない。
いや、ひょっとしたら帰れはするのかもしれない。俺が協力しないことが明確であると彼らが理解すれば、別の人間をこの世界に喚び招くだろう。
ただ、それがいつになるのか。それまでエーテルリンクが無事でいられるのか。それはわからない。
ましてや、来月に控えたルナちゃんの初ライブに間に合うなんて奇跡、起こるとは思えない。
……彼女のライブ参戦を諦めるか? 自分の命を最優先にして、安全な旅路を選んだり、次の召喚者を期待して?
自分で考えて、バカな、と一蹴する。それだけはありえない。俺は彼女をこの命続く限り、全力で応援し続けると決めているのだ。
『彼女に命を救われた日』から。
それじゃあ、答えは一つだ。
「……わかったよ。やってやるよ! さっさと帰って、ルナちゃんのライブに参加するためにな!」
これで満足か無慈悲な異世界人どもめ!