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決戦前夜④

「…………は? 今、なんて? 何て言ったの?」


天空神の藪から棒な発言に対し、そう疑問を呈したのは、俺ではなかった。


「アイリス」


見ると、会議室の扉のところに、シャワールームから戻ってきた女性陣全員の姿があった。

皆一様に頬が上気して赤らんでおり、湿度を含んだ髪がしっとりと(つや)めいている。


しかし、その先頭に立つ金髪の少女の面持ちは、一面には色っぽささえある風呂上がりの状況とは正反対に、凍り付いたような無表情だった。


「ねえ、それ何の話? カミ、って神様のこと? 誰が? ……アンタが?」


「…………」


『その認識で間違っていません、アイリス・サンフィールド。知っての通り、彼、篠崎悠葉は天空神である私の神位を受けた神位魔術師のようなもの。私の次代となり、新たに神へと昇位出来るのは彼以外にありません』


答えかねている俺に代わり、スピーカーの向こうから天空神の声がアイリスへ返答する。俺へと詰め寄ってきたアイリスは、壁の上から聞こえてきた声に気付き、依然緊迫した表情のまま、声の聞こえてきた方向へと向き直る。


「どうして……どうしてユーハがそこまで背負わなきゃいけないんですか! こいつは、エーテルリンクの問題とは何の関係も無い、チキュウ人なんですよ! ホントなら、あなたたちが何とかしなきゃいけない問題じゃないですか!」


『そのことは重々承知しています。そして、信じてはもらえないかもしれませんが、申し訳ないと思う気持ちも、あります』


「なら、どうして――」


『彼も承知してくれているからです』


天空神へ声を荒げて追及していたアイリスだったが、その返答で首を絞められたように息を呑んだ。

興奮冷めやらぬ視線が、再び俺のことを映し出す。


『篠崎悠葉へ協力を要請するのは、これが初めてではありません。今日、貴女たちと合流する前に、既に同じことを問うてあります。彼も最初は、貴女と同じことを言いましたが……最終的には、承諾してくれました』


「アンタ……本気なの」


「いやまあ……神様うんぬんの話までは聞いてなかったけど」


天空神め、ズルい言い方するよな。確かに納得はしたし、やる気にもなってたのは間違ってないが、細部が異なるぞ。


手放しで了承したのは、地母神のやりたい放題を止める、ってところまでだろーが。そのための具体的な方針までは詰めてなかっただろーが。神様どうこうって言われて面食らってるのはこっちもだ。


とはいえ……そこで詳細を決めなかったのが、ある意味全てとも言える、のかもなんだけど。


「一応、本気」


「……アンタねぇ! ちゃんと意味分かって返事してんの!? 神様よ、神様!! 神位魔術師とか王様とか、そういうのぜーんぶ飛び越えて神様になるって話なのよ!?」


「分かってるけど」


「分かってない!! 絶対絶対、ぜーったい分かってないわこのドバカ!!!」

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