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決戦前夜①

『ンで、どォすんだよ』


「……どうするって言われてもなぁ」


重々しい空気に満ちる会議室の中、俺とハーシュノイズがぼそりと呟いた。


……赤上さんの身体を支配していた炎闘神を辛くも退けたものの、地球の神界へその身をくらませた地母神を眺めることしか出来なかった俺たちは、しばらくその場で放心状態だったのだが、徐々に近づいてくる複数のサイレンの音で正気を取り戻した。


警察にも救急隊にも消防隊にも通じる説明の出来る人間なんて、地球どころか異世界にだっていやしない。


誰からともなく各々の発動出来る最大の術を用い、惨憺(さんたん)たる光景の路地を、脱兎のごとく全力で逃げ出し……現場から程近くにあった、祭賀氏が経営し、かつルナちゃんのアイドル事務所である、『シロカゼプロダクション』が居を構えるビルへと転がり込んだのである。


六階建ての雑居ビル。その四・五・六階をシロカゼプロダクションが借り受けている。事務所と会議室・社長室のある四階と、給湯室・仮眠室・シャワールームのある五階、フロア全体がやや小さなダンスレッスンルーム(簡素な防音処理済み)の六階とに分かれている。俺とハーシュノイズがぼやいたのは、その会議室でのことだ。


ディアナをはじめとした女性陣は、戦闘の疲れと汗を落とすため、勝手知ったるルナちゃんに連れられシャワールームへと出払っている……気晴らしも兼ねている、と思うのは、俺の勝手な予想なんだけれど。


祭賀さんと赤上さんは、会議室と同じフロアの事務所で、何やら工作活動に勤しんでいる。『この後の会議に使えるものを用意するよ』とのことなのだが、モノが一体何なのかは知らされていない。


俺も手伝おうとしたのだが、企業の社外秘な情報もある事務所内を動き回るのもどうかということで、仕方なしに一人待機していた、というわけだ。


いやまあ、正確には一人ではない。霊であるハーシュノイズもいるし、俺の身体の内側には、エーテルリンクの天空神アーツが間借りしている。


会議室で手持無沙汰な中、ざっくりとハーシュノイズから聞いた話によると、アイリス――いつの間にか風雅神と呼ばれる神の神位を与えられ、後輩と呼ばれていた――は、ルナちゃんとリラの手を借りることで初めて彼の声を認識出来るらしく、姿と声の両方を把握出来るのは、単独では俺しかいないということだった。


祭賀さんたちが俺に待機を勧めたのは、自分たちでは意思の疎通が図れない異世界の専門家(まじゅつし)と対話し、状況の打開策を練ってほしい、という意図もあったのかもしれないが……

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