相棒って本当に頼りになる⑧
そんな俺の様子を気にも留めていないのか、ディアナがバッグから機械を取り出した。
ようやく視界が定まってきた俺も、目を細めて魔導機械を見てみる。
透明な半球体が、板状の本体部に乗っかっているような形状の機械だった。
板部分の手前にはモニターのような画面があり、この世界の数字らしき字面が表示されている。その下に、アプリやプログラムの進行度を表すのに似た細長いバー表示もある。
透明な半球体の中には、なんと俺たちが回収した魔晶が入っていた。
魔晶から魔素が漏れ出して、半球体の内側に触れた途端、青い光を発して下の機械に吸い込まれていく。
「これは……どうやら、魔晶内の魔素を吸収する魔導機械のようですね。この、モニター部と球体部の間に小さな空間がありますが、ここに魔素吸収の触媒が入っているのでしょう。おそらくですが、特異点で魔晶を回収した際、旅の荷にならないようにするための配慮かと」
「なるほどね……」
それは確かに、『道中役立つもの』だ。持ち運べる荷物には限りがあるからな。
ディアナによると、魔素を吸い尽くされた魔晶は、その後は強靭な鉱石のようになるらしい。もう魔素を発することもなく、魔物が狙うこともなくなるため、国で強力な武具に加工したりすることが多いという。要は、魔晶がため込んだ魔素を回収したのち、魔晶そのものは廃棄してしまって良いということだ。
機械を細目で睨みつける。魔晶から流れ出す、というより、吸い上げる魔素に限りがないから、球体が常に光っているのか。バックから取り出した今は光が周囲に拡散し、直視しなければ目を焼かれる心配はない。
ディアナに、少し離れたところに置いてもらう。こいつを明かりの代わりにすることにしよう。
洞穴の中がそれなりに明るくなった。
さて、今の機械でバックの中は随分とスペースが開いたが、他に何か入っているだろうか。
中を覗き込むと、見慣れた教科書群や筆記用具の間に、場違いな金属色がちらりと見えた。
取り出してみる。車のエンブレムのような模様が施された、金属製の装飾品だった。手のひらよりやや小さい。
「ディアナ。これ、何かわかるか?」
「……申し訳ございません。私も聞き及んでおりません。その装飾はトレイユ国の国紋と思われますが」
うーむ。ディアナも心当たりがないか。さっきの機械と違ってただの飾りなのか?
ひっくりかえして裏を見ようとしたところ、ひらりと二つ折りの紙片が床に落ちた。装飾品を取り出した時、気付かないで一緒に掴んでいたらしい。
開いてみると、エーテルリンクの文字だ。あの魔術師の残したメモに違いない。
例によって俺には読めないので、ディアナに代わりに読んでもらう。




