金・三・判⑫
両手をポケットに突っ込んだままの姿勢でアカガミさんが答えると、再び焔製の刃物たちが、雨あられと降りかかってきた。
アタシは短くリラに呼びかけると、空を舞う刃の内の四枚をルナとサイガおじ様の方へ向かうよう指示する。一切の遅延なく応じた桜色の刃が、より細かい粒子へと砕け、背後の二人の護衛に回る。
残された一枚の刃片と、自身に付与した身体強化の魔素のみを頼り、アタシは回避に専念する。迫り来る槍を躱し、斧を逸らし、矢を薙ぐ。
少しでも反撃に転じられる隙が出来ないか。その僅かな可能性を信じて、ひたすらに避けて、避けて、避けまくった。
しかし、弾雨の勢いは一向に弱まらない。視界の先には、それほどに絶え間なく魔法を発動し続けているというのに、まるで疲労を感じさせない様子の……それでいて、何ともつまらなさそうな表情の、アカガミさんの姿がある。
「はぁ……」
つまんね。
そう、声も無く零したのが聞こえるようだった。
感情をありありと込めた溜め息をついたアカガミさんが、失望の視線で、いや、諦観の目線で、アタシたちを見る。
「こんなモンか……いくら半端者とは言え、もう少し抵抗してくれると思ったがな……こんなことなら、アーツの眷属たちでもう少し楽しんどくんだった」
「っ! アン、タ、それは……くぅっ!」
「オイオイ。こっちの独り言にいちいち反応する余裕あるのかよ? 今のヤバかったぞ。もうちょい必死になれ。でなきゃ、次は皮どころか腕ごと無くなるぜ」
恐らく、ユーハとディアナのことを指したのだろうアカガミさんの言葉に反応した瞬間、僅かに膠着したアタシの左腕を赤銅の銛が掠める。薄暗い路地に鮮血が舞った。
……突破口が見えない!
今はどうにか回避し続けていられるが、アカガミさんの魔素が尽きる様子が全くない。
アタシは、悔しくもアカガミさんの指摘通り、全力で集中してようやく回避が可能な状態。
ルナたちの方に回ってもらっているリラの欠片たちも、きっと同じ状況だろう。
ルナと離れてしまったことで、ハーシュノイズ様の声も今は聞こえていない。
この状況を打破する手段を彼が知っていても、それを知る術が無いのだ。
このままでは、消耗したアタシたちがいつか傷を負い、そこで終わってしまう。
……そんなのは、絶対に嫌だ。
先程も覚悟し直したばかりじゃない。
ハーシュノイズ様の言った通り……ユーハと、ディアナと、ルナと、リラと……他にもたくさんの人たちと、エーテルリンクでライブをするんだ。それまで終われないんだ。
そのためには。
イチかバチか、残された魔素の全てを使って捨て身の特効を仕掛けるしか、無い――
「見、て、なさい、よ……!!」
アタシの考えが察されたのだろうか。眉を上げてこちらの様子を窺う素振りを見せるアカガミさんに向かって、アタシは鋭い視線を向ける。




