金・三・判①
一人の少年と、その相棒たる少女が、地球ともエーテルリンクとも異なる亜空間に消えた、翌々日――
「――――!? ……っは!? あ、もうチキュウじゃない……」
がっくりと肩を落としたアタシの隣で、リラとルナが細めていた目をゆっくりと開ける。
そこは、先日訪れたチキュウの公園だった。時刻は昼日中だというのに、倒壊した遊具で荒れ放題なせいか、人の姿は無い。よくよく見ると、公園の入口には黄色と黒の帯が、出入りを封鎖するように張り巡らされていた。
「ん……かえって、きたー……」
「あ、アーちゃん、大丈夫? 何がどうしたの?」
取り乱すアタシを気遣い、ルナが声をかけてくれる。未だに信じられない、といった顔面蒼白な顔をしたまま、その重圧から逃れるかのように友人に縋りついた。
「ルナ、ルナ。エアリベル様がアタシに、神位名を……!」
「し、神位名って、フレアさんとか、サンファさんと同じやつ?」
「そうなのよ! オカシイでしょ!? アタシあんな人たち程化け物染みた戦闘能力無いのにぃ! 魔素の特性変化くらいしか特技無いのにぃ! 重いわよこんな肩書き!!」
「化け物って……」
差し出された手にかじりついてわんわん騒ぐアタシに、ルナが苦笑する。
と、そんなアタシの肩に、小さな手がぽん、と置かれた。
「だいじょうぶ……かーさまは……すごい、魔術師……! リラ、しってるから……」
「リ、リラ~! うぅ、お母さん、負けない。頑張るからね……!」
「もう、何と戦ってるの、アーちゃんは……ほら、しっかりして?」
リラの小さな体を抱きしめ、めそめそとしていたアタシを、ルナが引き剥がしにかかる。
まあね? 実際のところ、そこまで深刻に悩んでるわけじゃないのよ。ちょっと気持ちの整理というか、吐き出すタイミングが欲しかっただけで。
エアリベル様も『仮免許』と言っていただけあって、アタシに宿された神位の魔素は、フレア様やサンファ、様に比べるとかなり少ない。神位魔術師は、神位名を授けられた時に、その莫大な魔素の影響で不老になるってことだけれど、アタシにその様子は無さそうだ。
それに、別に神位名を授けられたからととって、アタシが定位魔法が使えない、っていうのは変わらないみたいだし。風雅神の魔素を分けられたってだけの、ホントに仮免許って感じ。
……今後、本格的な魔素の授与がされたら、分かんないけどね。
さて、と。ルナに促されて立ち上がる。
ユーハたちのことが気になる。早いところ合流しないと。
荒れた公園にいつまでも居たら目立つしね。
「おーい! お前たちー!」
すると、公園の敷地外から、アタシたちに向けて叫びかける人影が見えた。




