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異世界(の神様が地球に)転移⑦

『まずは、ディアナ。心核の回収を。もう浄化は済んでいます』


「あ、はい」


天空神の指示に相棒が応じると、暗闇の中何か長い帯のようなものが躍動するのが、空気の震えで分かった。そのあと、「ん……」という、何かを嚥下する少女の声。


さっき俺の身体から素因排奪(ディスチャージ)で抜き出した心核を、ディアナが飲み下したのだ。星の光に似た色の結晶が帯の中から現れ、ディアナの口に含まれる寸前の一瞬、闇の中で光り輝く。


少女の細い喉をも照らしていた心核は、そのまま胸の辺りまで到達したところで視認出来なくなった。ディアナの身の内に溶け出したらしい。再び、辺りが暗闇に包まれる。


ディアナのいる方角を見て頷く。姿こそ見えないが、銀白の相棒は俺の視線を紅の双眸で受け止め、頷いたのが分かった。差し出した右手に、夜色の剣に変じた相棒が納まる。


心素(エナ)を』


「おう」『はい』


短く告げられた指示に、俺は目を伏せて自身の胸の奥に集中した。

ディアナと共に通わせる心素の波長が徐々に高まり、みるみるうちに経験したことの無いほどの強大な質量に膨れ上がっていく。


『……(マスター)魔装(デバイス)響心(シンクロ)率は、脅威へと立ち向かうことで飛躍的に高まる。三体の魔晶個体と三人の神位魔術師を退け、それ以上の実力とも思える召喚者をも打ち破った貴方たちは、充分に神位の器たり得るでしょう』


練り上げられた圧力を研ぎ上げる。より鋭く、(はや)く、重く――


『更に、意図した展開ではなかったにしろ、魔装自身も、主に匹敵する心素擁する心核を持ち、それを交換出来るほどの親和性へと成った。ここまで心素伝導率の強い……響心率の高い魔装は、未だかつて存在したことがありません』


夜剣が、その(くら)い刀身に内包する、星粒のような輝きの一つ一つが、眩いばかりの光を放つ。漆黒の空間が星明かりに照らされ、真昼の如く光り輝く。


『その、比類無き神位級の響心率と、貴方たち二人の心素があれば……単純な心素の増幅だけでも、この空間を突破出来るでしょう』


俺とディアナが通わす心素が、かつてなく最高潮に高まった。

今なら俺にも理解出来る。地母神の空間を貫く威力を造り出せているということが。


さあ、あとは最高最大の心技をブチ込んでやるだけだ。


「準備はいいぞ、天空神!」


『…………』


『……? あの、天空神様?』


……なんか急に黙りやがったんだけど。どうかしたのだろうか。


ここまで焚きつけておきながらお預けとか言うんじゃなかろうな。


『静かに。今、点を見極めています。そのままいつでも心技を放てるように待機していてください』


「点?」


『……この亜空間は、紛い物とはいえエルデアースの造り出した神域。時間も空間の概念も無い特殊な領域なのです。適当なところから抜け出ると、どの時代のどの地域に出現することになるか分かりません』


「げ」


某二十二世紀の猫型ロボットが登場するアニメでよく見る、タイムマシンでの移動中に、時空嵐に巻き込まれて吹っ飛ばされるみたいな現象ってことか。

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