異世界(の神様が地球に)転移③
『彼女の目的は、この世界、地球においても神へと昇華し、永遠に近い時を生き続けること。地球における肉体を用意したのもそのためです』
「……は?」「はい?」
『エーテルリンクにおいて、我々神は精神体です。肉体は世界を創造した際、各々の司る概念へと変化しました。私は空、彼女は大地といったように……従って我々には肉体が無い。それでも、エーテルリンクにおいては我らの理で成り立つ世界故に、魔法による干渉が可能なのですが、違う理で成立する異世界となるとそうはいかない。我々とその異世界との間を繋ぐ、共通の楔が必要となる。それが無くては、神と言えど、そこらを漂う幽霊と同じ、ただの非物質的存在にすぎません』
「いや、待って」「あの、お話がよく」
『そして、その楔というのが、地球人の肉体なのです。これを得ることでようやく、エルデアースは地球での真の自由を手にした。物理的にも、魔術的にも、世界へ干渉することが可能になった。恐らくですが、エルデアースのあの肉体は、本来何の関係も無い地球人だった女性のものを奪い去ったのでしょう』
「ちょっと待ってって」「え、ええと……? 地母神の目的は、チキュウの神様になることで……それで……?」
『神をその身に宿す肉体は、いくつかの条件を満たすものでなければいけないのですが……エルデアースがエーテルリンクから姿を消したのはおよそ百年前。捜す時間はいくらでもあったでしょうね。適性のある地球人の肉体に潜むと、神威の気配は完全に遮断されるようです。私と同じ目を持つ貴方が気付かないのも無理はありません。私もつい今しがた、貴方の身の内に潜んでようやく気付いたのですから』
「だからちょっと待ってくれってば!!」
しびれを切らした俺が大声で叫ぶと、そこでようやく、天空神は矢継ぎ早に垂れ流していた情報をせき止めた。そして、どこか不満げというか、訝しそうな声音で問いかけてくる。
『……どうかしましたか?』
「情報量が多い! 話が長い! 一つ一つの内容が濃い! 少しは噛み砕く時間をくれ!!」
『あまり時間の余裕は無いのですが』
「これほどの情報量では、理解するどころかただの語句として暗記することことも出来ません! 少しお待ちください!!」
『……仕方がありませんね』
俺とディアナのコンビネーション批判により、どうにか天空神は続きを話すことなく落ち着いてくれた。時間の余裕が無いことにも理由があるのだろうが、その理由を理解するためにも、まずは前情報である今の話を整理しないことには始まらない。
「復唱させてもらうぞ。えーとまず、フィリオール先生……いや、エルデアースの目的っていうのは、不老不死になることで……そのために、エーテルリンクじゃ飽き足らず、地球でも神様になろうとしてる、ってことでいいんだよな?」
『その認識で間違っていません。彼女の最終目標は不老不死……永遠の時を生きること。しかし、人の身ではそれは成し得ない。エーテルリンクで神の座を得ても尚、それは叶わなかった』
「だから、別の理から成る世界で、神になろうとしている……」




