異世界(の神様が地球に)転移②
……天空神の回答を聞いた俺は、ぱちくりと目を丸くしてしまった。
ちぼし……えっ、地母神? フィリオール先生が? 普通の、人間の魔術師じゃなくて?
「えっ、うっそだぁ、神様? 棒付きキャンディ舐めながら、司書の仕事そっちのけでお喋りに興じるような先生だぞ」
何度も見たことがある。委員会の生徒に仕事を完全に任せて、高校生にしては派手な化粧やアクセサリーを付けた女子とぺちゃくちゃ喋っているところを。
とはいえ、丸投げされている側の生徒も満更ではなく、むしろ彼女の仕事を任せられていることが一種の誇りになっているかのような様子だった。そのうえ、適当なところで――主に終業時間間際だったりするのだが――フィリオール先生も業務に参戦するので、そこで丸投げの不満もなあなあになっているみたいだった。
神様にしちゃ、やけに人間味があるっていうか……神様っぽくなさすぎる。
『その印象には大いに共感しますが、彼女が私と共にエーテルリンクを創造した神であることは、紛れも無い事実です。それと、貴方のそのエピソードからすると、ただの教師にしては、随分と人心掌握術に長けているようには思えませんか?』
「……まあ、言われてみればそうかもだけど」
人との距離の詰め方とか、生徒や教員たちの心の開かせ方は、年若の司書には似つかわしくない手腕だったかもしれない。少なくとも、俺はあの学校内でフィリオール先生の悪い評判を聞いたことは無かった。
人心掌握……その単語は、ある魔術師の顔を彷彿とさせる。
サンファ。俺をエーテルリンクに召喚した魔術師。
奴の神位魔術師としての二つ名は、「心魂奏者」。
その名の通り、人間や響心魔装たちの精神に干渉し、意識を操ったり、洗脳することを得意とする魔術師。
人の心を掴む。人の精神を操る。ニュアンスが近い、かもしれない。
『心魂奏者、サンファ……彼こそ、エルデアースが神位名を授けた神位魔術師に他なりません。彼の得手とする魔法の特性が、己に似通っていたから選んだのでしょう。彼もまさか、求め続けた主神が、異世界たる地球に居ようとは思わなかったでしょうが』
「エーテルリンクの神がチキュウへいて、向こうの世界へ影響は無いのですか?」
『……エーテルリンクへの影響は問題ありません。元より、あの人は神としての仕事のほとんどを私に押し付けていましたから』
「え。どういうこと?」
『つまりですね――』
なんでも、俺が見た図書委員の生徒たちよろしく、フィリオール先生……地母神は、神として世界の管理を行うべきところを、しかし全くせず、天空神に丸投げしていたらしい。エーテルリンク全土で、創造神イコール天空神という認識になっているのはそのせいなのだとか。
……なんか、苦労してそうだな、この神。




