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独白⑱

その行為を行っているという事実に、脳の奥がかあっと熱くなる。

沸騰して蒸発してしまいそうになる思考力を鋼の精神で制御し、私は心の中で叫んだ。


……素因排奪(ディスチャージ)!!


やりどころのない感情を爆発させるように唱えた式句は、声こそ出ていないものの、かつてない大声量だったに違いない。


胸中での詠唱に応じ、私の胸の奥とマスターの心核とが呼応し、ドクンと一度(ひとたび)脈打った。夜色の光が薄ぼんやりと漆黒の世界の中輝き、私とマスターの口元を照らし出す。


数秒のち、重なっていた唇を離す。頬を赤らめ動悸を落ち着けている私の鼻先に、雪の結晶を思わせる意匠の、星の光に似た色の結晶体が現れた。


マスターの、心核。


――それを取り込み、貴方の持つ心核と交換して下さい! 急いで!


間断なく告げられる天空神の指示に、またも僅かな間、窮する。


私の持つ心核とは? 響心魔装(シンクロ・デバイス)が、チキュウ人であるマスターの心素(エナ)と同等の心核を持っている筈が――


――いや。


「はい!」


天空神の指示の意味を理解すると同時、自身の胸元に夜色の短剣を突き立てた。


瞬く間に、突き立てた夜剣を解除した手の内に、夜色の樹木のような形の結晶体が現れる。かつてエーテルリンクで、サンファ氏の強制隷属の術式により操られた私が、当時のマスターより奪い取った心核だ。


その心核は、サンファ氏が私に預けたままにしている内に、マスター、アイリス様、フレア様がトレイユを強襲したことにより、結果的にそのままになっていた。


私が、マスターの身の内に粒子となって潜めるようになってから、エーテルリンクからチキュウへと来た頃から、私の中に……私という夜色の素因(エレメント)の中に溶けきっていたのだ。


鼻先に表出させた星色の心核を左手で握り締め、夜色の心核を口内に頬張る。

そのまま、心の中で再びマスターへの謝意を告げながら、もう一度私は唇を押し付けた。


舌で押し込んだ心核が、マスターの口内に移動すると同時、形の無い粒子の如く溶けだすのが分かった。すると、苦痛の色に染まっていたマスターの表情が落ち着き、安らいでいく。


ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、左手で握る心核が邪悪な魔素(マナ)を放ったことに身構える。握っていた私の手を振りほどき、凶悪無比な圧力を放ちながら心核がひとりでに浮かび上がった。


星色の心核が、黒と赤を混ぜたような魔素に侵されていく。

その様子に冷や汗を流した私に、落ち着きを取り戻した様子の凛とした声が届いた。


――ここはお任せを


天空神の屹然とした一言の直後、どこからともなく現れた幾条もの夜色の帯が、鋭い軌跡を描いて心核へ巻き付く。心核は瞬く間に夜色の帯の内に覆われ、遮断されてしまった。もう、邪悪な圧力の欠片も感じられない。


――これで良し。浄化のために、貴方に残る主の心素を大部分借りることになりますが、浄化後の心核を吸収すれば問題無いでしょう

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