相棒って本当に頼りになる④
ディアナの提案で闇夜神路をもう一発放ち、穴を深めに、かつ奥に行くほど広くなるように掘り広げてから中に入った。
完成した洞穴はそれなりに広いスペースを確保できた。学校の教室を縦に三つは繋げたくらいだろうか。開けたばかりなこともあって湿気も無く、ひんやりとした空気が心地よい。
洞穴の奥で月神舞踏を解除し、肩にかけていたスクールバッグを下ろす。息を吐きながら腰を落ち着けると、すぐに瞼が下がってきた。同時に抗いがたいほど強い眠気も襲ってくる。
「やはり、マスターはかなりお疲れだったようですね。私が警戒しておりますので、ごゆっくりお休みください」
「みたい、だな……少しだけ、眠らせてもらうかな……」
頭をぐらぐらさせながらディアナに返答する。ついさっきまでは睡眠欲など感じていなかったが、この分だと眠りに落ちるのも時間の問題だ。
いや待て、その前に。
俺はポケットに手を突っ込んでスマホを取り出した。今にも眠りこけそうな半目でスマホを操作する俺に、ディアナが怪訝そうな視線を向けている。
「マスター、何を?」
「……眠る前に、一度見ておきたいんでね」
動画フォルダ内の、何度再生したか覚えていない一つのトラックをタップ。
一瞬スマホの画面が暗転したかと思うと、パッと場面が変わる。煌めくステージの上、はじける笑顔をした一人の少女が華麗なステップを踏み、高らかに歌声を響かせる姿が映し出される。
そう。ルナちゃんのデビュー曲MVである!
今ここでこれを見ずして充分な静養など得られようか! いやそんなはずはない!
ディアナは言った。心身を……身も心も十分に休ませよと。
そのために俺に必要なのはほかでもない。敬愛する、マイオンリーワンにしてナンバーワンアイドルであるルナちゃんの笑顔と歌声だ! むしろそれ以外何も必要ないと断ずる。飲食でさえも。
このMV一つ取っても、彼女の魅力が存分に、余すところなく盛り込まれている。




