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目が見えなくては生活も出来ない⑩

人差し指を伸ばした俺を、心底鬱陶しそうな視線でサンファが流し見た。

その視線が、俺の胸元――しまい込んだ天空神の魔晶に移り、殊更に細められ、


「……ハ。借り物の力を使うだけでいる分際で、良く吠えるッ!」


瞬時に見開かれると同時、彼我の距離が再び詰められた。


初撃時と異なり、天空神の魔晶は既に収納済みだ。全神経を回避にのみ注ぎ、振り抜かれる杖を飛び上がって回避する。そのまま、付かず離れずの位置でサンファの猛攻を避け、かつ反撃の隙を窺いながら、俺は魔術師の言葉に耳を傾けた。


「知りたいのなら教えてやる! 貴様に力を与えたその神は! 僕が母親同然に慕っていた、地母神を幽閉したんだ! 傲慢なことにね!!」


「なん、だって……!?」


激昂した様子であることは間違いないのに、正確無比に俺の頭部を狙った刺突を、手の甲で弾いて芯を逸らす。


『そのような事実は、聞いたことがありません! 仮にそうだとして、なぜ天空神が、地母神を拘束するというのですか!』


「そんなことは知るもんか! だが、エルデアースの意識が無いのは紛れもない事実だ! それがもう百年も続いている……こんなことが出来るのが、天空神の他に居る筈が無いんだッ!!」


再びの杖による大振りの打撃。いい加減予備動作も覚え、早々に回避に移れるかと思った矢先、今まさに飛び上がろうとしていた空中を狙うコースで、尖った石柱と大小さまざまな岩石の弾丸が打ち出された。


跳躍を緊急中断。跳躍のために展開した魔法陣をそのまま足場に変え、その場で旋回する。

放たれた夜色の波動……闇夜神路(リ・ディアセレナ)が、迫り来る魔法もサンファもまとめて押し込んだ。


バランスを崩して膝を付いた魔術師が、しかし僅かな陰りも見せない鋭い眼光を宿したまま、ゆっくりと立ち上がる。


「僕は何があってもエルデアースを……母を取り戻す。そのために魔素(マナ)を集め、心素(エナ)を集め、エーテルリンクの人間たちに、兵隊に出来る一歩手前まで精神操作を掛け続け、響心魔装(シンクロ・デバイス)たちを従え……神界へ攻め込み、天空神を()とす準備を整えてきたんだ!!」


「……そういうことだったのか……」


確かに、その話がすべて真実だとするなら、俺が巻き込まれた状況も、スプリングロードゥナから聞かされたサンファの怪しさについても納得出来る。


「結果的には好都合さ。極大量の魔素や心素を要せずして、天空神と出会えたというのはね!」


再び、サンファが瞬きより早い速度で俺に接近する。俺が意識して接近戦を仕掛けていた先ほどとは逆の流れで、サンファ自らが近距離で肉弾戦に持ち込み始めた。


「僕はこの瞬間を、百年以上もずっと待っていたんだ! ……だからッ!!」


そう魔術師が呟いた瞬間。周囲を取り巻く空気が、一変したのが肌で分かった。

怒涛の勢いで繰り返される猛攻を退けつつの感覚ゆえに、気のせいのようにも思えるが、確かに何かの気配が変わった……ような、気がする。


先程までは、一切の遠慮もなく殺気を発していたサンファ。その冷血さを示すかのように冷え切って、張り詰めていた空気が、一転して変化していく。


何だか、熱い、ような……?

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