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目が見えなくては生活も出来ない④

さて。気を取り直して、当初の目的のために行動しよう。


「ディアナ、頼む」


『御心のままに』


短く呼びかけると、応じた相棒の気配が、俺の目元へ収束されていく。


放課後、通勤通学の時間帯故に人通りの多い商店街。書店のガラスから道行く人々の流れに向き直った俺は、軽く深呼吸して目を細めた。意識が集中されるのにつれ、雑踏のざわめきが彼方へと遠ざかっていく。


「……見えた」


『ああ゛!? オイお前マジかそんなあっさり上手くいくモンか!?』


零した俺の呟きに、今度はハーシュノイズが一人驚愕の声を発する。確かに思いのほか上手くいったけど、間違いなく見えている。


雑踏の中にうっすらと見える、白のような透明のような色をした、ほのかに煌めく光の帯。

多分アレが、天空神の魔素(マナ)だ。かなり集中していないと気付くことも出来ない程に微かな気配。


天空神を捜すための心当たりの手段というのは、眼鏡によって視力を回復した状態で、ディアナの視覚補正を行う、ということだったわけだ。


裸眼で補正を掛けた時は、純粋に視力を後押ししていたが故に、特別な魔素やらを感じ取るための知覚は足りていないんじゃないかと思ったのだ。まあ、そもそも俺みたいなド近眼じゃなければそんな心配も無かったんだろうけど。


ハーシュノイズの、『天空神の眷属でなければ出来ない捜し方』っていう言葉もこの手段を用いる後押しになった。正直、俺やディアナと天空神の結びつきっていうか、共通点みたいなのってそこしか無いもんな。これが外れてたらもう宛ては無かった。良かった良かった。


光の帯は、ゆらゆらと水面のように揺蕩(たゆた)いながらも、拡散することは無くその場に漂い続けている。少なくとも、今俺の視界に映る範囲では、いくつもあるようには見えず、一筋に繋がっているように見える。


多分、これを辿れば天空神の下に辿り着けるんじゃないだろうか。


『例の公園が、あちらの方角ですね』


「そっちが出発点として……んじゃあ、こっちかな」


ディアナが指差す方向を背に、光の帯を辿っていく。すると、商店街のアーケードを出た横断歩道付近。帯が、自然に飛んだにしては異常な直角で右折していた。


「ハーシュノイズ。天空神って、魔晶のままで移動出来たりするのか?」


『知らね』


「おいっ」


けっこう重要だぞそれ! 流石に無いとは思うけど、極端な話、日本の外に出る可能性もあることになっちゃうだろが!


『っせェーなァ! ちったァ考えろ! そんだけの自立飛行が可能なら、オレに運ばせる意味がそもそもねェだろーが!!』


「あ……そっか」


『せいぜいこの町周辺か、遠くても隣町がいいとこだろ! ッたく、それぐらい分かんねェーもんかね』


イヤ分かるか! こちとら魔法とか魔素とか専門外を通り越して無縁の日本男子だっつーの!


『ま、まあまあ、落ち着いてください、マスター。手掛かりは見つかったのです。焦らず着実に辿りましょう』


「そうだな……うん、そうしよう」


手掛かりが見つかったらすぐこれかよ。傍若無人なハーシュノイズに肩を落とす俺を、ディアナが優しく気遣ってくれる。やっぱり相棒は頼りになるよな……助かるよ色んな意味で……


溜め息にも似た深呼吸で気持ちを切り替えた俺は、どこまで続くか分からない光の帯を追って歩き始めた。

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