金・三・響⑩
金色の光が穏やかに消え去ると、アタシたちはひんやりとした空気が漂う石造りの部屋の中にいた。
半ば放心気味に周囲を見回すと、背後の壁に見覚えのある薄青い光を放つ鉱石を見つける。
魔晶だ。
「覚えがあるだろう? あの穴に」
「穴? ……あ、アレかあ」
そんなアタシに声をかけるフレア様だが、魔晶とは別のものを指しているようで、ついオウム返しのように聞き返してしまう。
改めて周りに視線を向け、魔晶の程近くにぽっかりと空いている穴のことを言っているのだと気付いた。
ってことは、ここは、ユーハたちと来た迷宮最深部の広間のようだ。
「お前、アレを忘れるのはないだろ。お前たちが私をぶっ飛ばした時に出来た証拠なんだからな」
「いやぁ~……あの時は無我夢中で何が何だか……」
アタシをからかうように笑うと、フレア様は魔晶の方に歩いていく。
そうして、自身が生成したと思われる擬似魔晶に触れると、魔晶と穴との中間付近の壁に、更に下層へと向かう下り階段が現れた。
「こっちだ」
未だ杖代わりの槍を突いた弱々しい足取りのまま、黒髪の女王は階段を下っていく。
その背中にグゥイさんとリーが無言で続き、顔を見合わせた後、アタシたちも後を追った。
……音らしい音が何もない、完全な暗闇の中だ。
先頭のフレア様と、中間地点のアタシ。そして最後尾のイルミオーネ様が、手に手に灯した光源たる火種が、僅かな光で暗闇を追いやっている。階段を下る足音以外、周囲は完全な静寂に包まれている。
ちょっとでも歩いたら魔物と遭遇していた迷宮とは、全然違う雰囲気だ。ここはもう迷宮の内部ではないということなんだろうか。
そんな、暗闇の行脚をしばらく続けると。
「ここだ」
フレア様がそう言い、階段を下るのではなくそのままの高さで前へ進む。
最後尾のイルミオーネ様が同じ段に降りるのと同じくらいのタイミングで、フレア様が右手を頭上へ掲げた。
柔らかく灯っていた火種がいくつかに分かれて飛んでいく。やがて燭台らしき部分で停止した火は、その規模を増して周囲全体を照らし出す照明に変わった。
「わー……すごいね」
照らし出された光景に、隣のルナが息を呑む。
現れたのは、見るからに荘厳な造りの巨大な建物だった。
全体的な造りは、迷宮の入口を管理している冒険者ギルドに似ている。入口に石製の大きな柱が両側に並んで立ち、焔を模したものと思われる細かい装飾が精緻に施されている。
当然と言うべきなのか分からないけれど、人気は一切ない。そしてそのことがむしろ、この場に降り立った時から薄っすらと感じていた、威圧感にも似た神聖な空気。その雰囲気を一層強く醸し出していた。




