金・三・響③
アタシの顔面目掛けて射出された紅蓮の槍を、五片の桜色の刃が縦に重なって真正面から受け止める。目の前で、盾と槍がせめぎ合うスパーク音が鳴り響いた。
「リ……ラ!?」
眼前で起こっていることへの理解が追い付かないまま、身体を硬直させるアタシの腕が背後へと引かれる。
「イルミオーネ姫、お願いしますっ!」
「だから、姫と呼ぶなと言っとろーがッ!!」
アタシの立ち位置を瓦礫の山で半歩退かせ、ルナが叫んだ。直後、桜の盾が防ぎ続ける紅蓮の槍を、視界の横から現れた翡翠色の槌が薙ぎ払い、使い手であるイルミオーネ様が再び姿を現す。
火焔体は、放った槍が防がれたことに業を煮やしたのか、馬鹿正直に真っ向から追撃の熱線を放った。瞬時にリラが離脱し、イルミオーネ様が再度展開した結界が熱線を砂粒へ変える。
その様子をぼうっと眺めた後ようやく、アタシは自身の手を引いた少女に向き直った。
「ルナまで、どうしてここに――ムグぅ!?」
来るなと言ったはず。そう追求しようとした途端、両の頬をルナに押さえ込まれる。
「アーちゃんのバカ! こんな無茶して……!」
叱りつける友人の視線が、アタシの口元付近に残る血痕に注がれているのに気付き、何も言い返せなくなる。
「で、でも、もうこれしか方法が」
それでもどうにか説得しようと口を開いたアタシの頭を、小さな手がぺしん、と叩いた。
「……ばか……かーさまは、ばか、だよ……」
「リラ……」
その手刀は、魔装形態から少女の姿へと戻ったリラによるものだった。今にも泣きだしそうな表情で、両の瞳いっぱいに涙を溜めているのが分かる。
アタシの服の裾を固く握り締める桜髪の少女は、握る力を一度強くすると、意を決した表情で顔を上げる。その姿を見たルナが、意を察したかのように頷いた。
「……リラも……かーさまを、てつだう……ルナと、いっしょに!」
「イヤとは言わせないよ、アーちゃん。ちゃーんと、私の力が必要な時は呼んで、って言ったしね!」
「え、え。でも、どうやって」
二人だけですっかりその気になってるんだけど! 話についていけていないアタシは、おろおろしながらそう呟くことしか出来ない。
「だいじょーぶ! アーちゃんのやろうとしたことは分かってるし、リラちゃんの考えた作戦だってあるんだから! ね?」
「リ、リラの考えた、作戦……?」
手を腰に当てて自信たっぷりに言い放つルナと、無言で頷くリラを交互に見る。しかしアタシは、そのまま素直に「お願い」と告げることが出来なかった。




