金・二・災⑪
「そして……それだけではないぞッ!」
紅蓮の槍が、先端から瞬く間に砂の欠片となって崩れ去る中、悪いカオで笑うイルミオーネ様が右手を火焔体へとかざす。
すると、紅蓮の槍を放った火焔体の指。槍の根元……石突部分と接合している、火焔体の身体までもが、砂に変わっていくではないか。
『――▲ン〇◆×ナ!!?!?』
このとき初めて、火焔体が感情らしきものを露わにした。
明らかな動揺を見せたと思ったら、槍と繋がっていた指の部分を瞬時に切り離し、更にイルミオーネ様から後ずさるように距離を取ったのだ。
ということは、間違いない。あのまま、イルミオーネ様の結界と触れた槍とが繋がったままだったら、本体も同じように砂に変わってしまうんだ。
触れたものを、自身に付与された大地の加護である、砂粒へと強制的に帰属させる。
それが、イルミオーネ様の心技なんだ。
「流石に驚いたようだな! そうとも、その感情は正しい。その全身が魔素の塊だろう貴様には、天敵と言って良い心技だからな……フフフ……ハァーッハッハッハッハッハ!!」
仁王立ちで高笑いをするイルミオーネ様。確かに、それだけ自信満々になるのもわかる効果だけれど、戦闘中にその態度はあんまり無防備なんじゃないかしら。
「そんだけスゴい心技があるなら、一気に周りの焔も消しっちゃってくださいよー!」
アタシが叫んだその一言に、何故かピタッと金髪の女王の高笑いが停止する。
なんで急に真顔になんの? いやな予感しかしないんだけど。
『あ、それ無理ですぅー。見てのとーりぃ、この魔法陣が効果範囲最大でー、つーかこれが限界、ってやつなんでー』
……そんなことじゃないかと思ったわよ!!
「じゃあせめて、あちこちの火事場に直接展開するなりでどうにかなるんじゃないの!?」
『それも意味ないですー。この結界ってぇ、わたしの究極化を魔素か心素に通して魔法とか心技を崩す術なんでー、魔法から引火したただの火には効かないんですよぉー』
聞いた感じ、完全に『待ち』の心技ね。対魔術師や、響心魔装を連れた召喚者には有効そうだけど……フレア様を相手に想定してるのがまる分かりじゃない。
「ええいやかましい!! 余計なことをくっちゃべっている暇があるなら、あの執事を拾って次の案を考えさせろ!」
その心技の能力を誇りつつも、効果範囲の狭さという欠点も抱える複雑な心境を払拭しようとしてか、イルミオーネ様が大声で叫んだ。同時に右手を振り上げると、地属性魔法の弾丸が火焔体に向けて放たれる。




