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女王と魔術師②

「あいたたた……なんか彼、急に狂暴になってないかなぁ。あの少女魔装(デバイス)の入れ知恵だったりしないよね……おや王。遅かったですね。それほどまでに血相を変えて来たというのに」


「ハァ、ハァ……あ、あの無礼な小僧は!? まさかもうベロニカに発ったというのか!?」


「ええ、つい今しがたですけどね。行ってしまいましたよ」


「あ、あやつめ……王である私に顔すら出さずに国を出たか……いやしかし、それにしては早すぎるのではないか? まだあの小僧を()んでから半日ほどしかたっておらんぞ」


「ああそれなんですが、彼、特異点への向かい掛けに『月の魔道工房(ムーンファクトリー)』製の響心魔装(シンクロ・デバイス)を拾ったみたいなんですよ」


「はああ!? あの工房は数年前に閉鎖されたはずだろう! それになんだ、拾ったって! お前、響心魔装が我が国が誇る最高最強の魔導兵器であると自覚しておるのだろうな!」


「してますよ、もちろん。あれの発案者僕ですもん。忘れやしませんって」


「……その割には冷静ではないか。とても、国への反乱容疑をかけられていた『月の魔道工房』の秘蔵っ子を目にしたもののセリフとは思えんな。万が一にも、このトレイユが傾くようなことがあってはならんのだぞ」


「その点は問題ありませんよ。ちらと目にしただけですが、基本骨子である術式が僕の設計した回路そのままになっていました。いざというときには、問題なく防衛魔法を発動できます」


「であればいいがな……ん? 待て。響心魔装といえば剣や杖といった通常武具の延長線上にあるものだったな? それがなぜ、召喚から半日も経たない小僧を次の国へ向かわせることができる?」


「そこは僕にも盲点だったんですがねー」


「――契約者の全身を覆い、身体をさらに強化する魔装だと!? ただでさえチキュウ人の身体能力は高いというのに、それをなお後押しするか。やはりあの工房の技術者連中は食わせ者だったな……」


「しかもですねぇ、あの二人の響心(シンクロ)率が尋常じゃないくらい高いんですよ。魔装形態(デバイスモード)でもないのに九〇超えてるんですよ? ちょっと目を合わせただけですぐに一〇〇を突破しましたし……あの様子だと、魔晶個体相手にもそう苦戦しなかったでしょうね」


「身体能力の強化に加え、虚空を蹴って空中を瞬く間に疾駆する、か……ならば霊山からの帰還も、ベロニカへの道中にある山脈を飛び越えるのも容易だろうな」


「ええ。あれなら休憩を挟んでも、数日で到着できるでしょうね」


「さながら月輪を跳ぶ黒き兎、といったところか……」


「……見てみたかったんですか? 実際に飛ぶところ」


「……うるさい」

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