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金・二・災②

グゥイさんの表情が凍り付く。アタシたちの全員が一様に息を呑む。


その場にいる誰もがきっと予想していた。門に辿り着く前にちらりと見えた、国を焼く焔を目にしたときから。


そして同時に、「そんなまさか」と思っていたんだ。不意に脳裏によぎった予想を、全員が胸の内で否定していた。


でも、その予想の通りだった。


街々を覆い尽くすほどの神位の焔。それを操り、今まさに自身の国を襲っているのは……フレア様、その人なんだ、って。


「ほんの、数分前のことです……迷宮(ダンジョン)攻略をしていた冒険者の皆さんが、ひどく慌てた様子で続々と帰還して来たんです」


受付嬢さんが言うには、普段なら冒険者は昼間に帰還することがほとんど無いらしい。


国内の宿屋で一泊して、翌朝に迷宮に挑んだ一行(パーティー)が帰還するには早すぎる時間帯であり、より深部へ向かう一行は迷宮内で数日、数週間を平気で過ごすため、足並みを揃えて戻るようなことが無いからだ。


それが、深部に向かう名の知れた一行や新人らしき一行も織り交ぜた冒険者たちが皆、慌ただしく帰還して来る。その中の一人、最前線を攻略するほどの冒険者を捕まえて事情を聞くと。


「『とんでもない魔素(マナ)を宿した焔が下層から駆け巡って来た』と……」


「……その焔が溢れて、遂にはガランゾ全域に行き渡ってしまった、ということですか」


言葉尻を引き継いだグゥイさんの言葉に、受付嬢さんが力無く頷く。


……アタシたちも含め、グゥイさんがガランゾに急遽戻らなくちゃいけなかったのは、迷宮の最深部に向かったと思われるフレア様と、連絡が取れなくなったから。そして、この焔が現れたのは迷宮の深部からだと、迷宮最前線を攻略していた冒険者が証言してる。


なにより、目の前で猛り狂う焔。見間違えるハズがない。


この焔はかつてアタシが、ユーハたちと共に対峙し、そしてそののち、アタシたちを助けてくれた……神位の焔。


フレア様の焔だ。


「今、動ける宮廷魔術師全員と、冒険者の方々に協力してもらい、何とか被害を国内に押し止めていますが、それもいずれ限界が来てしまいます。このままでは……」


受付嬢さんたちは、住民の避難に駆け回っているそうだ。その甲斐あってか、人的被害はほとんど無いそうだけど……宮廷魔術師や冒険者の人たちの魔素にも限りがある。それに対し、神位魔術師であるフレア様の魔素量は甚大だ。


このままじゃきっと、焔は防衛ラインを突破して、国壁を越えて大陸中に伝播する。そうなってしまったら、ベロニカも、マリーネも、トレイユも、きっと無事ではいられない。


グゥイさんがきゅっと唇を噛み締めるのが分かった。アタシと同じ結論に至った、んだと思う。


受付嬢さんの肩にそっと手を置いて頷くと、執事服の女性はアタシたちの方に向き直った。


「皆様。本来であれば、全くの無縁である皆様にお願い出来る道理などありません……ですが」


緊迫した面持ちのまま、グゥイさんが、腰を折って深々と頭を下げる。


「お願い申し上げます。ガランゾを……フレア様を救うために、お力添えを頂けないでしょうか。事態が収束した暁には、私の裁量で許されるものを、何であろうと全て皆様に差し上げます。ですから、どうか……どうか!」

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