金・二・道①
窓の外の景色が、あっという間に背後の彼方へと過ぎ去っていく。
ルナの国ではこれがいくつもあって、毎日とんでもない数の人を乗せて走っているって話だけど、途方もない話ね……
グゥイさんの用意したシンカンセン、という名の見慣れない乗り物にアタシたちが乗り込んでから、半日ほどが経過した。今は切り拓かれた自然の中を、馬車を遥かに上回る速度で駆け抜けている。
乗車した総勢七人は、出発当初はその異様さや馬車を遥かに上回る移動速度にはしゃいだり、おののいたり――これはイルミオーネ様だけだった――していたけど、その後流石に眠気が訪れ、誰からともなく夢の国に旅立っていった。今は、その仮眠からみんなが目覚め、一息ついた頃である。
今アタシたちがいるのは客室で、要するに乗車席のある部屋だ。ルナの話だと、チキュウで走っているシンカンセンの一両の半分? くらいの大きさらしい。そのくらいの空間の中に、三人ほどが並んで座れる座席が縦に五個並び、それが二列ある。
アタシ・ルナ・リラと、イルミオーネ様・ダリアさんとに分かれて先頭の座席に並んで座っている感じだ。
その先には操縦室に続くドアがあり、グゥイさんとリーはそっちにいる。
興味があって覗こうとしたんだけど、ルナに止められた。チキュウの方でもそうなっているらしいけど、関係者以外立ち入り禁止ってやつみたい。まあ確かに、見慣れない魔導機器が多く並んでいるんでしょうし、好奇心のままに弄り倒しちゃうかも……それで事故でも起きたらシャレにならないものね。
今どのあたりにいるのかしら。窓の外の景色は基本的に森の中という感じで、たまにフレア様が強引にくり抜いたんだろうなと思われる山肌の穴を通り抜けるくらいで、あまり変わり映えしない。
もうお昼頃だし、距離的にはベロニカの近くまで来ていると思うんだけど。
そもそも国外に出ることがあんまり無くて見覚えのあるところとか無いし、分かんないわねー。
くぅ。
そんなことを考え、座席の肘掛けに頬杖をついたアタシの耳に可愛い音が聞こえてきた。
何いまの。
音のしてきた方向、座席間の通路を挟んだ向こう側の方をゆっくり向く。
「私じゃないぞ」
「何にも言ってないですけど」
「……私じゃないぞ」
「陛下ぁー。今なんか鳴りませんでしたぁ? 陛下の方から聞こえてきたと思うんですけどぉー」
「…………私じゃないぞ」
頑なに認めようとしないわねこの人。
お腹が空いてるなら素直に言えばいいのに。アタシもちょっと空いてきたし。




