金・二・再⑨
「あれっ? アーちゃん、神位魔術師さんの遺体も連れて行くの? 氷漬けにしちゃって」
「ん。なーんか、リーとグゥイさんがね、フレア様に預けるから保存しとけ、ってね」
「……陛下ぁー。いいんですかぁ? わたしたちまでこんなのに付き合わなくってもぉー」
「いやダリア。コレはむしろ好機と捉えろ。あの鬼婆さえ手こずる案件に助力し、奴に貸しを作ってやるのだ! この先何十年と続く大きな貸しをな! フハハハハハ!! 奴が頭を下げ、手を貸してくれと泣いて頼む姿が目に浮かぶわ!!」
「なーんで失敗する可能性は考えないんでしょーねぇー、このマスターは……」
「皆様、準備はよろしいですね? ではこの機にご乗車ください」
「え、うそ! これって……!」
「初見でお気付きになるとは、流石はシロカゼサイガ氏の御令嬢。そう、これこそガランゾの宮廷魔術師と王室御用達の鍛冶師らが粋を集めて造り上げた、国家間直通高速移動艦――チキュウでは『シンカンセン』と呼ばれる機体です。まだガランゾ―トレイユ間にしか開通しておりませんが」
「お、おおお前たち……! 私の許可も無くいつの間にこんなものをッ……!!」
「フレア様に代わり、わたしがトレイユに赴くことになった時ですが?」
「ガランゾに帰りながら、直線の障害物を排除して道を作ったのね、あの人……」
「その通りです、アイリス様。またこの機はチキュウのそれとは異なり、魔素を原動力に地表を滑るように駆動するため、車輪や動力線の用意が必要無いのです。この機であれば、人の足なら約三週間とされる距離が、なんと三日で移動可能になる」
「ハン。そんなものを動かす膨大な魔素、どこから用立てるつも、り……オイまさか」
「お話の最中に察するとは、成長なさいましたね。フレア様の特訓を受ける前のイルミオーネ様であれば、説明するまで思い至らなかったでしょうに」
「馬鹿お前それだけは止めろあれだけの魔素を集め直すのにどれだけの労力が必要か」
「残念。心魂奏者が蓄え、この城に残された魔晶回収の魔素。その媒体たる指輪の残二十七個全ては、既に動力核に装填済みです。もう駆動系に魔素が充填されている頃でしょう」
「あああああああああああああ!!!」
「あ、アハハ……グゥイさんったら結構容赦ないわねー」
「おいお前たち。もう動力核は十二分に稼働している。出るぞ」
「あ、ちょっと! 今乗るわよ待ちなさいって!」
「…………」
「……どぉーかしたんですかぁ?」
「……なんでも、ないー……」
「ふぅーん……なら、いいですけどねぇー」
「目的地は第三の特異点管理国ガランゾ。彼の天壌紅蓮を脅かすほどの難題の攻略が目的だ。気を引き締めてかかれよ……さあ、出発だ!!」




