こんな相方は欲しくなかった⑪
『あ゛-? ンなの俺が理屈を知るワケねーだろが。魂と肉体は紐づいてなかったってそんだけだろ。それよか、さっさとここを出ろ。もう人除けの魔法も切れンぞ』
……今にして思えば、俺が過去相対した幽霊たちも、遺体にくっついて移動していた、というわけではないし、死した時点で魂は自由になる、のかもしれない。
それはさておき、ハーシュノイズに再三促された俺は、未だ疲労の抜けきらない肩を落としながら、ディアナに目配せした。頷いた相棒が全身を夜色の鎧で包むと同時、公園の地面を蹴って空に舞い上がる。
まだ世界には夜の帳が下りているが、人除けの魔法とやらの効果が無ければ公園の惨状に誰かが気付き、大騒ぎになるだろう。そうならない内に退散しなければならないのはその通りだ。
しかし慣れない指示と説得で疲労困憊なのもまた事実。
これは直帰してベッドに直行、朝まで安眠コースだな。学校は……サボろう。うん。
何しろ、明日からはサンファの足取りを追うための『手がかり』を探さなければならないのだから。
……ハーシュノイズは、アイリスや祭賀氏らへ事を説明するにあたって、俺にとある指示を出した。それは、その手がかりについては触れずに説明するということ。そして可能であれば、祭賀氏と赤上プロデューサーの二人から皆を引き離すこと。
「……本当なのか? あの二人のどっちかが、サンファとグルかもしれない、って」
『まあ、消去法だけどな。お前とジジイがやり合ってる間その場にいねェで、かつ、サンファのことを知ってる、ってのはアイツらってだけだ』
『しかし……お二人は純粋な地球人ですよ? 魔法を使うどころか、魔素の扱いすら満足に出来ない筈では』
『だァからグルって言い方にとどめてんだろ! まさかアイツら自身が俺をヤったとまでは流石に思えねェ……神位魔術師を手にかけるレベルの魔法を使えば、人間なら絶対に魔素が揺らぐ。それが無かったんだからなァ』
実際にやったのは、自分たちの居場所を補足し、実行犯である謎の魔術師に伝達するくらいだろう。そうは言うものの……ハーシュノイズの予想が、俺にはどうしても納得出来なかった。
赤上プロデューサーはルナちゃんのプロデューサーだ。俺が初めてルナちゃんのと出会った時、彼女の隣で道行く人にCDを販促していた姿を覚えている。担当アイドルのために、自分自身も一緒に前線に立って頑張れる、そういう人だ。
祭賀氏に至ってはルナちゃんのお父様だぞ? あのパーフェクトアイドルルナちゃんの親御さんが、人を殺す手助けをするだろうか……ルナちゃんの親族という点を差し引いても、俺たちに李へ対抗するソウルドライブという手段を示してくれたしなぁ。
夜空を駆ける中思考を巡らすも、答えは出ない。モヤモヤとした心持ちのまま、俺は話題を逸らした。




