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二度あったことを三度はさせない⑨

つまり、そんな変人研究者どもが、わざわざ何らかの術式で鍵をかけてまで隠していたのが、ディアナってことだ。


この魔術師は、国で把握していない存在であるディアナに、この旅を完遂できるだけの実力が果たしてあるのだろうか、ということを懸念しているのか。


それとも、そうまでして秘匿されていたディアナに、得体のしれない力でも宿っていやしないかと疑っているのか……


そんな考えを巡らせた俺の胸中を読んだかのように、サンファが言葉を続ける。


「ま、そんなところだね。我々が管理把握している魔装個体であれば、魔晶回収の旅においての信頼は折り紙付きだ。戦闘能力、豊富な知識量などなどね。極端な話、彼女の実力不足で旅が続けられなくなる恐れもゼロじゃないだろう?」


片目を閉じて、気遣いとも取れる視線を向けてくるサンファに、俺は特に考えもせず答えた。


「そんな心配ないさ」


「おや、即答とは。つい先刻出会ったばかりの少女をやけに信頼しているようだね」


確かに、ディアナと出会ったのはほんの数時間前だ。しかも、今にも首長竜の攻撃を受けそうだっていう極限状態でもあった。俺が抱いている信頼感は、危機を共に乗り切ったという吊り橋効果じゃないのか、と言われれば、否定できるだけの材料はない。それでもだ。


彼女とともに、竜に立ち向かった時のことが思い浮かぶ。

あのとき俺たちの間にあった、奇妙な連帯感を思い出す。


そして、最初に剣と化したディアナを手にしたときの、『大丈夫』という無根拠の自信を――


「ふぅん……随分と……だね……」


サンファが何事か呟いていた様子だったが、全ては聞き取れなかった。


そんな風に記憶の海に沈んでいた俺の後ろで、ぎぃ、と控えめな音でドアが開いた。


「……マスター? こちらですか?」


音のした方を見ると、ディアナが木製の扉の陰からひょっこりと顔だけを覗かせて、廊下の様子を窺っている。


「起きたのか」


「申し訳ありません。ご説明の最中に眠ってしまうなんて」


「いや、構わない。俺こそ、疲れてたところに長話させて悪かったな」


「そんな、非があるのは私の方です。マスターには本当に申し訳なく……」


「いやいやだから気にすんなって……」


低姿勢のキャッチボールを何度か繰り返していたところでハッとする。

予想違わず、俺たちのやり取りをにやにやとほくそ笑みながら眺める魔術師の姿が……


「なるほどねぇ~。やっぱり随分と仲の良いご様子だねぇ」


クッソこいつ静かにしていたと思ったら!

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