こんな相方は欲しくなかった⑨
「……大丈夫? 確か写真撮影とか、雑誌の取材とかあったよね。それに、学校も」
「そこを調整するのが私たちの仕事だ。それにお前自身も、アイリス君らと一緒に行きたいと思っているんだろう? 気にしないでいい」
そう言い、祭賀氏が赤上プロデューサーに視線を向けると、すぐに満面の笑みでの首肯が返ってくる。
「あ、バレてたんだ……うん! じゃあ、私も行ってくる!」
一瞬申し訳なさそうな表情になったルナちゃんだったが、その眩しい笑顔で周囲を照らし出しと、アイリス達の方へ駆けていく。
『これで全員、だな?』
背後からぼそりと問いかけてきた声に、俺は小さく頷く。
その様子が気取られることが無いように、アイリスにより魔素が注ぎ込まれ始めた魔法陣へと歩み寄る。
「じゃあみんな、よろしく頼むな!」
「わーかってるわよ、って」「……はーい……」「それじゃあ、行ってきます!」
鼻を鳴らしただけの李以外の少女たちが、三者三様の出発を告げると、それを待っていたかのように金色の輝きが周囲を満たす。
やがて光は視界いっぱいに広がり……再び視界が蘇った時、そこにはアイリス達の姿は無かった。
……第一関門クリア、って感じかな。
アイリス達の消えた魔法陣を眺め、俺はディアナと視線を合わせて頷く。
「さて……これで説明してくれるんだろう? 篠崎君」
そんな俺の背に、祭賀氏が声をかけてくる。小さく深呼吸したあと、意を決して背後を振り向いた。
「すいません、無理言ってルナちゃんまで同行してもらって」
「全くだ、急なことで驚いたよ……しかし、どうにも君の表情が険しかったからね。あれは、一時的な避難の意味もあったんじゃないのかね?」
げ。そこまで見抜かれているか。この人には隠し事出来ねーな。
だが、ハーシュノイズの話を聞く限り、俺はまだ誤魔化さなければいけないことがある。
まずは、真実を。
「その通りです。結論から言うと……サンファは、まだ地球に居ます」
きっぱりと言い切った俺の言葉に、祭賀氏と赤上プロデューサーの目が見開かれる。
「やはりそうか……しかし、それならば、アイリス君やあの李という男をエーテルリンクに行かせたのは何故だ? 万一サンファと出くわし、戦闘になった時に戦力不足なんじゃないか?」
確かに、その点は祭賀氏の言う通りだ。もしサンファと全面戦闘に陥った際、協力して強大な心技を放てるアイリスや、単騎で神位魔術師をも凌駕する李の戦闘力による影響は大きい。
俺は、あらかじめ予想して準備しておいた『回答』を答える。
「だけどそれは、あくまで『全面戦争』になった場合だけです。あいつの性格やこれまでの傾向から、俺や李に対して真っ向から勝負を挑んでくることはまずない……むしろ、アイリスやルナちゃんが一人のところを人質に取ってきたりする方が危険ですし、その可能性の方がよっぽど高い、と俺は思うんです」
「……成程。では君は、一人で奴を追い、捕えるつもりでいると?」




