こんな相方は欲しくなかった③
『まだある』、と続けるハーシュノイズの言葉に、俺は耳を傾ける。
『そもそもだ、あのお国大好きお節介焼きの天壌紅蓮サマが、エーテルリンクを離れてコッチに来るか? っつゥ話よ!』
「それは……まあ」
スプリングロードゥナ……俺自身色々手を貸して貰っているし、世話焼きなイメージはあったが、まさか同じ神位魔術師にもそんな印象をされていたとは。
いや、コイツなんか若干子供っぽいっていうか、ほっとくと危なそうなところあるから、他の人以上に余計に気にかかったのかも……
話が変わり出した脳内を、軽い咳払いで舵取りする。
ともあれ、ハーシュノイズの言うことには同感だ。
異世界転移には大量の魔素が必要でコストも高いし、スプリングロードゥナのような存在感や立場のある人物がそう易々と留守にする筈もない……ああいや、国の外にはよく出てたみたいだけど。簡単に行き来出来ない世界単位では流石にしないよなってことだ。
『何かの間違いで来てたにしても、流石にわかる筈だしよォ……アイツ気配遮断みてェな魔法得意じゃねーし』
「ああうん、そんな気がする」
『……マスター、そこはあまり重要ではないかと』
え? あ、そっか。
脳死気味に頷いていた俺をディアナが制する。再度意識の舵を元の路線に戻す。
「その、貫かれた槍っていうのは、本当にスプリングロードゥナの炎魔法だったのか? 他の、誰にも知られてない強い魔法使いの攻撃とかじゃ」
『そいつも考えたが、ありえねェ。あれは天壌紅蓮の、神位を宿した紅蓮の炎だった。腹から出たものを見間違える程耄碌しちゃいねェよ』
そうか、その線は無いか……
……あれ? じゃあいったい誰がハーシュノイズを攻撃したんだ?
『だァから、簡単じゃねーって言ッたろォが』
……なるほど、そういう意味か。
凶器たる魔法から考えられる該当人物が、スプリングロードゥナしか存在しない。
しかし、スプリングロードゥナがそれを行えた状況証拠が存在しない。
では、ハーシュノイズを殺害したのは……誰なのか?




