こんな相方は欲しくなかった①
『ハーシュノイズ……破天風来、ジフ・ハーシュノイズの霊、ですか?』
『そォだよ魔装娘。見りゃ分かンだろうが……あァ、お前は見えねェんだったか』
公園の冷たい土の上に横たわる、物言わぬハーシュノイズの骸。その上に浮かぶ、全く同じ姿をした青年が、骸以上に物を申している。
両手を頭の後ろに回し、寝転がって膝を組む姿は、数日前に目にした神位魔術師のものと相違ない。しかしそこから感じ取れる気配は、俺が長年感じてきた、幽霊のそれと同じものだ。
そんな気配の感じと、今まさに目の前に横たわるハーシュノイズの遺体とが……宙に浮かぶ青年が、幽霊であることをありありと示していた。
「お前、いったい何が……どう……なんなんだ?」
一瞬の情報量があまりにも多い。その整理もろくに出来ないまま呟かれた問いは、何を問いたいのやら訳の分からないものになってしまう。
ハーシュノイズの遺体を検分していた李が、俺の声に気付いて振り返った。妙なものを見る目つきで眉を潜めている。
それも仕方がない。俺の目線は、遺体や李にではなく、何も無い虚空に向けられていたのだから。
『ッたく、やっと手ェ止めやがったか』
李が検分の動きを止めたのを確認して、中空に浮かぶハーシュノイズの霊は、寝転がっていた上半身を起こした。まるで自身がいるのが自室の床でもあるかのような振る舞いだ。
『さァーて何から話したもんかね……そォだまずはガキ、その場にオマエとジジイ以外に誰かいるか?』
「え? ……いや、いない。さっきまで知人がいたけど、その人は今他の知り合いを呼びに行ってるから」
この場所での出来事を突き止めた赤上プロデューサーは、後から到着するアイリスたち、祭賀氏一行を呼びにこの場を離れた。それにより、今この公園には、俺とディアナ、李しかいない。
そう……あのクソイケメン魔術師の姿も無い。
先日李に敗れた駐車場で、薄れゆく意識の中聞こえた、サンファの悦に入った声がフラッシュバックする。
「……ここで、何があったんだ?」
そのことでようやく落ち着きを取り戻した俺の問いに、眼前の魔術師の霊が、鼻を鳴らして答えた。




