あくまで法に則った布教活動をしております④
俺は無言で手を伸ばし、その光球に触れようとした。李に真意を伝えるには、ただ口頭で述べても無駄だと思った。何かしらの接触干渉が必要な気がしたのだ。
「……っ!?」
が、その手が光球に振れるか否かといったところで、件の光球そのものが急速に振動し始める。
次の瞬間、一たび大きく脈打った光球が不可視の振動波を発し、俺の近付けた手を弾き飛ばした。
「マスター! ご無事ですか!?」
「だ、大丈夫。ちょっと弾かれただけで痛くはないよ……しっかし、コイツは」
明らかな抵抗を見せたことに加え、周囲の闇に漂うあらゆる記憶の光球から、李の声が輪唱のように響き渡る。
『触れるな』
『彼女に近付くな』
『この記憶に手を出すな』
『さもなくば、殺す』
「……精神世界でここまでの抵抗が出来るなんて」
声と共に辺りに広がり始めた殺気を感じ取り、ディアナが身構える。
俺も心底びっくりしている。李は、実体というか目に見える姿こそ取れないものの、自身の心核における防衛機構を備えている。要するに、ものすごい我の強さ、精神力の強さで、己の心を護っているのだ。
そしてそれは、かつて俺がルナちゃんにそうしてもらったのと同じこと。
殺す、と宣いつつもどうやらそれはあくまで警告に過ぎないらしく、流石に俺たちを能動的に排除することは出来ないようだが……それでも、それを自分一人でこなすかよ。どこまで強いんだコイツは。
しかし……
「あったまきたぞ。ディアナ、頼む」
「は、はい。ですが、よろしいので?」
「いやもうコイツはこれくらいしなきゃダメだと思う」
「それには同意しますが……分かりました」
ディアナの身が変じ、夜色の長剣となって俺の右手に収まる。
頭にきた。最初はちゃんと穏便に伝えるだけのつもりでいたけど、ここまで強情だとは。
……だから、俺たちの全力をここでもぶつけてやる。
「耳かっぽじって、よーく聞きやがれ!」
夜剣に心素を集める。リラと共に放った時ほどではないが、それくらいの威力の方が、今はむしろ丁度いいだろう。
練り込む心素の中に、伝えるべき真実を織り込んで、放つ。
ソウルドライブ。
「『交錯する勇気!!』」
十字の波動が夜剣から迸り、眼前の心核に直撃した。予想通りというべきか、光球は凄まじい高速振動を放ち、威力を削いでいる。俺はソウルドライブの放出を続けた。
そして、一瞬。光球の高速振動が、ほんの少し弱まった。
「……聞け! 頭でっかちの戦バカ!」
その瞬間。心の防壁を緩めた刹那。俺は叫ぶ。
「――グレイスフィールは生きている!!!」




