完成形は分かるけど到達までが不明なタイプの修行パート⑧
俺の話を静かに聞くルナちゃんの瞳が、徐々に驚きで大きくなる。
彼女にも衝撃だったのだろう。自分のある意味同種とも呼べる能力を持つ人間に出会ったのが。
「だから、嘘だなんて思っちゃいないよ。急に変な話聞かせて悪いな」
「そ、そんなことないよ、って言い方もヘンだけど……そんな風に思ってないから!」
霊視能力について明かした俺はつい、過去受けていた虐めの件も合わせて語ってしまっていた。暗い思い出しかない、気が沈む内容しかないのに……引かせてしまったんじゃないかと心配になる。
「そっか……悠葉くんも……」
「? 今、なんて?」
「あ……ううん、なんでもないよ!」
聞き返した俺に笑顔を向けてくれるルナちゃん。その表情は、先程差し入れを手渡してくれた時と同じ、見ている方が元気を貰えるような眩しい笑顔だ。引かせてない……かな。良かったマジで本当嫌われてたら寝込むわマジで。
しかしルナちゃんは明るい表情から一転、またも眉をハの字に傾け、申し訳なさそうな面持ちに変わる。
「だけど、ゴメンなさい。あの人……李と名乗った人の未来は視えなかった。私には、エーテルリンクでの時のように、手伝ってあげられないの」
「あ、そういえば……」
その言葉で思い出す。俺はルナちゃんに、かつてエーテルリンクで俺が心核を奪われた時、意識の世界とでも言うべき空間で、俺を導いてくれた光のことを尋ねた。
あの声、あのシルエット……あの光は間違いなく。
俺の予想を先読みするかの如く、眼前の少女はこくりと頷き、あの時と同じ声で答える。
「うん。あれは私。正確には分身、かな?」
秘密は、かつて彼女が俺に手渡した、スターエイルのCDにあった。
「あのCDにはね、お父さんの心法陣が刻んであったの」
「しんほうじん? 心因魔法陣じゃなくて?」
「うん。心因魔法陣は心素と魔素が必要だけど、心法陣は心素だけで発動する儀式図形のことだよ。普通の、魔素だけで発動する魔法陣の心素バージョンみたいなもの、だね」
あのCDに刻まれていたのは、術者である祭賀氏、ルナちゃんと、その効果を受ける当人……すなわち俺の、三人分の心素で発動する、心核を護る木霊を生み出す術式だったのだそうだ。
被術者の持つ心核……その人間を動かす原動力たる最大の意思を、サンファの魔の手から守護する精霊の創造。
しかしその効果はエーテルリンクの魔法や心因魔法に比して遥かに弱く、現実的な物理干渉を成すに至るほどではない。具体的に言うと、炎や氷などを実際に生み出して、元凶たるサンファを迎撃するとかいう風には使えず、被術者自身の想像力や心素を利用して、心に防壁を張るくらいがせいぜい、なのだと言う。
ルナちゃんと祭賀氏自身が異世界に召び出され、彼の魔術師の狙いが分かったことで取れた、次なる召喚者のための対抗策だった。




