コンクリ<鉄<<<<<拳くらい強い⑨
氷で出来たどデカいハンマーで、頭をぶん殴られたような気分だった。
祭賀氏の一言ですべてが腑に落ち、冷え切った脳が即座に回答を導く。
俺が異世界での魔晶回収を、一ヶ月という短期で強行出来たのは、どうしてか。
そのための動力源となった、俺の足を進ませ続けた目的は何か。
決まっている。ルナちゃんの初ライブに現地参戦するためだ。
そして――その目的は達成されている。
「……気付いたかね。魔装の二人はどこか察していたようだね。自身を流れる主の心素に、どこか勢いが無かったのを」
かつて強大な魔獣を退け、神位の魔術師をも下した俺の心素は、もうその目的を果たしてしまったのだ。
それはつまり、当時のような力を今の俺は発揮できないことを意味する。
そのことを理解し、唐突に下半身に力が入らなくなった。
思わずその場にへたり込みそうになるのを、ディアナとリラに支えられ、何とか堪える。
「……二人は、気付いてたのか?」
「……はい」「……うんー……ちょっと、ねー……」
ディアナによると、エーテルリンク帰還の折から、少なからず兆候があったと言う。
異世界というある種の閉塞空間からの脱出を果たし、地球という日常に戻ったこと。
魔晶個体やサンファといった目に見える障害がなくなり、全霊をかける必要性が薄れたこと。
気のせいかもしれない程の微量な変化ではあったが、地球に戻ってからの数日で俺の心素の頑固さというか、強引さというか、芯の強さのようなものが少しずつ減じていくのを感じていたそうだ。
そして、今日。ライブ参戦という本願を達したのちの全力戦闘。かすかな違和感が確信に変わる。
「エーテルリンクに居た頃のマスターであれば……いかに強大な相手であっても、『成す術がない』などといった弱腰な感情は、持たなかったと思います」
ディアナに指摘され初めて、自分が負けることを想定して戦闘に臨んでいたのだと自覚する。
……今の俺には、李を倒すどころか、サンファを捕まえることも出来そうにない。もしかしたら、魔晶個体さえ撃破出来ないかもしれない。
「どうすれば……」
唯一の支えにして希望だった事実を打ち砕かれ、今度こそ俺は腰を抜かしてしまった。
リラが素早く背後のパイプ椅子を差し出してくれたおかげで、どうにか尻もちはつかずに済むも、立ち上がれそうにない。
青ざめた顔で失意に暮れる俺を、どこか申し訳なさそうに見守る推しアイドルの姿が見える。
……そんな顔をしないで欲しい。ルナちゃんのせいなんかじゃあ、絶対に無いんだから。そう思いつつも、口に出すだけの気力も持てなかった。
だが。
「まだ方法はある」
「……はい?」
俺に悲痛な事実を突きつけた張本人である祭賀氏はまだ、話を続けた。
今の話は、絶望的事実を叩きつけて『そんなわけだから君を死地にはやれない』という話だったんじゃ……?
俺の予想に反し、これからが肝だと言わんばかりの意思を瞳に込め、祭賀氏は口を開いた。
「ソウルドライブ、という技術を知っているかね?」




