揃いのアイテムって戦隊ヒーローしか持ってない気がする⑯
「マスター!」「ユーハっ!」
男性の背後から、ディアナとアイリスが同時にタックルを仕掛けた。それによって、倒れ伏す俺とサンファを狙った男性の拳が逸れ、地面へと吸い込まれる。案の定というか、地面が揺れるほどの衝撃が響き渡り、俺の身をも震わせた。
タックルの衝撃で相棒の髪からヘッドドレスが外れ、地面にカラン、と転がってルナちゃんの足元へ滑っていくのが見えた。銀白色の彼女の髪と同じ色をした、ディアナの獣耳が露わになる。
それを目の当たりにした男性が、目をくわっと見開いてディアナを見た。
「……響心、魔装! お前たちも、この外道の術中に嵌った者か」
地面を穿った拳を引き抜いた男性が、声に驚愕の色を滲ませる。
俺は今しかないと思い、倒れたサンファをそのままに立ち上がって、男性の声に答えた。
「あ、ああ、そうだ。俺とアンタは同じ召喚者だ。だから少し落ち着いて俺の話を――」
「では何故、お前の傍らには相棒の姿がある?」
「……え?」
対話のために落ち着くよう求めた俺を、男性の冷え切った声音が一蹴する。
次の瞬間、先程までクソイケメン魔術師に向けられていたのと同じ、強い怒気を孕んだ視線が俺にも向けられる。
「何故その男を庇う?」
「いや、これはついって言うか……」
「……そうか、貴様もか」
「な、なんだって?」
「貴様もこの外道の手の者だなッ!!」
「ちょ――っ!?」
違うよ! どっちかって言うと俺もあんた側で、こいつは敵でしかないんですけどー!?
と、俺が弁解する間もなく、一瞬で男性が俺の懐まで踏み込んでくる。固く握り締められた拳には、単純な力以外にも人一人を破壊するには充分過ぎるだけの心素が込められているのが分かった。
まずい。俺は自分の胸に向けて一直線に突き出されてくる拳をスローモーションで眺めて悟った。
直撃したら最後、骨は砕け内蔵は破裂し、俺が容易く絶命するだけの威力が、この拳にはあると。
俺は迫り来る必殺の拳を睨みながら、男性の後ろで立ち上がろうとする相棒と目を合わせた。
それだけで意を汲んだディアナの獣耳がピンと立ち、瞬時にその身を夜色の粒子へと変じさせる。
一瞬の刹那ののち、ガギィィィン!! という耳をつんざく音と共に、俺の両手に、涙が滲みそうになるほどの振動が伝わってくる。
『っく……! マスター、ご無事ですか!?』
「ああ! ディアナも大丈夫か!?」
男性の拳が炸裂するその寸前、夜剣へと変じた相棒で、俺は辛くも必殺の拳を受け止めた。
刃を立てるように受け止めているというのに、男性の拳には裂傷どころか擦り傷さえも見られない。




