揃いのアイテムって戦隊ヒーローしか持ってない気がする⑭
「ね、お父さん。私、お願いがあるんだけど」
「どうした、改まって。お願いとは?」
先を促す祭賀氏。ルナちゃんが言おうとしているのは、さっき俺の後ろでこしょこしょ話し合っていた件だろうか。それなら俺も内容が気になっていたところだ。
栗色の髪の少女が告げる内容を聞き漏らすまいと、耳をそばだてる。
ルナちゃんは胸に手を当てて小さく深呼吸すると、意を決した瞳で自身の父親を見据えた。
「あのね……私、アーちゃんとディーちゃんと一緒に――」
ルナちゃんの小さな口が、そこまで言葉を紡いだ時だった。
「見つけたぞ」
唐突に、聞き覚えの無い荘厳な声が耳に飛び込んできた。
不意にかけられた声に驚き、俺も、ディアナも、ルナちゃんも、その場にいる全員が声の聞こえてきた方向を見る。
俺たち以外に誰一人いなかった筈の駐車場内に、一人の男性が立っていた。
四十……いや五十代くらいだろうか。祭賀氏より僅かに年上に見える男性は、その眉間に深い皴を刻み、険しい視線でこちらを睨んでいた。
白髪がその大半を占めて灰色に見える頭髪をオールバックにしており、一体いつから使い続けているのかも分からない程ボロボロにすり切れたマントを纏っている。
布切れをただ羽織っているだけにも見えるが、その下には濃い緑色を基調とした中国風っぽい服を着ていた。人民服と言うんだったか。袖が広がっていない、学ランみたいに前ボタンで留めるタイプの服だ。
じゃあ、中国の人なのかな……あれでも、今聞こえたの日本語だったよな?
祭賀氏の知人とか、仕事関係の人だろうか。俺は完全に初対面だと思うし、ディアナ達エーテルリンクの住民がこっちの世界に知り合いがいるはずもないし。
そう思って祭賀氏をそっと横目で見たが、彼もまた今一つ覚えのないような表情をしていた。その隣のルナちゃんも然りだ。
え、誰も心当たり無い? でもここには俺たちしかいないしなぁ……
もしや気付かないうちに他の人がいたりするのか? そう思い、俺はきょろきょろと辺りを見回す。しかしやはり、他には誰もいない。ルナちゃんたちのように困惑するディアナとアイリスの姿があるばかりだ。
……が、そう思った俺の目に、顔面蒼白になって顔を強張らせるサンファの顔が飛び込んできて、思わずギョッとする。
まさか、あの人お前の知り合い――
目を見開いて固まっているクソイケメン魔術師に俺が語りかけるより早く、中国服の男性が再び言葉を発した。
「見つけたぞ……心魂奏者、サンファ」
「……おいおいおいおい。何の冗談だいこれは……夢にしたってタチが悪すぎるだろうが……」




