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揃いのアイテムって戦隊ヒーローしか持ってない気がする⑫

心因魔法の開発(じぜんじゅんび)に時間はかかったが、最終的には魔晶の回収という役目を無事に完遂し、一年と十ヶ月ほどで私と瑠奈は帰還した。その時は彼もまだ、穏やかな表情を取り繕っていたものだがね」


今や不快感を一切隠していない魔術師を見て、祭賀氏が苦笑する。

対するクソイケメン魔術師は、勢いよく鼻を鳴らして反論した。


「ハッ!! 隙さえあれば即座に反撃の用意までしていたくせに、よく言うよ! 天壌紅蓮(てんじょうぐれん)の件も飲み込んで無事に還しただけでも、諸手を上げて感謝されてしかるべきだと思うがね!」


「おお怖い怖い。私の用意した首輪を付けていなければ、とても面と向かって話すことなんて出来やしないよ」


「こ、コイツ……!? 僕の首の形ピッタリに造っておきながらぬけぬけと……! 計算済みだったんだろうがこの性悪め!」


うわあ。俺も一人、乾いた笑いを漏らす。俺の知る限り、腹の内が漆黒で邪悪なのはこのクソイケメン野郎がぶっちぎりで断トツトップなのだが……そのサンファに言われるなんて、祭賀氏もなかなかのやり手らしい。


まあ、サンファの思惑を事前に躱すくらいだし……あれ。


「……あの、どうやって響心魔装(シンクロ・デバイス)を連れ歩くのがヤバそう、って気付いたんですか?」


俺は授業中の先生に質問をするかのごとく、右手を上げて疑問を発した。その言葉を聞いたサンファが、ハッとしたような顔つきになって威嚇姿勢を抑える。


そうだ。それは今の話に出てこなかった。

そもそもどうして祭賀氏は、響心魔装を連れ歩かない選択肢を選ぶことが出来たのか。


俺もそうだし、きっと他の召喚者たちもそうなんじゃないかと思うんだが、ディアナ達響心魔装は、召喚者にとって唯一の仲間・心の支えになり得る。異世界という環境下での絶対の味方なのだ。


俺のように、今にも死が目前に迫っている、というような状況なら尚更だ……まあ俺の場合は、何が何でもルナちゃんのライブに間に合わせる、っていう目的もあったけど。


このクソイケメン魔術師はともかく、彼女らを疑ってかかる、というのが普通は難しいんじゃないかと思うのだが……祭賀氏は、どうやってそれを成し得たのだろうか。


俺の疑問に対し、祭賀氏は、先ほどのようにすんなりとは答えず、口元に手を当て「ふむ」と悩むような声を発した。


「それについては、私から勝手に答えるわけにはいかないな。瑠奈に直接聞いてみるといい」


「ルナちゃんに?」


「ああ。私の口から語れるのはここまでだ」


口調は先ほどと変わらない穏やかなものだったが、その言葉の裏には、「自分からは絶対に話さない」という真意が込められているのが、俺にも分かった。


どうやら俺以上に気になっていた様子のサンファが、今度は面白くなさそうに鼻を鳴らして、勢いよく缶コーヒーを煽る。


ルナちゃんに聞け、か。そういえば、彼女には俺も他にも聞きたいことがあった。

初めて出会った時のことや、エーテルリンクで俺が意識を失っていた時のことだ。


……ダメ元で連絡先聞いてみようかな……はっ!? 今俺何考えた!? 推しアイドルの連絡先だと!? ダメダメダメダメだろっていうかそもそもオッケー出るわけないしでも叶うならスマホの連絡先欄に白風瑠奈の文字があるとそれだけで日々の活力になる気がががが――


「ゴメンなさい! お待たせしました!」


「んんん!? いえいえいえ全然待ってないデスヨ!?」


「……アンタ今どっから声出したのよ」


脳内で加速して急速回転を始めていた俺の思考を、彼のアイドルの声が一瞬で塗り潰す。脊髄反射で反応してしまって変な声が出た。金髪の少女の呆れ果てた視線を必死に受け流し、咳払いで不自然な呼吸を落ち着ける。

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