揃いのアイテムって戦隊ヒーローしか持ってない気がする⑩
ぶすっとした表情で壁の方を見続けているサンファの背を押して楽屋を出た俺が、後ろ手にドアを閉めたときだった。
「ルナ、手伝ったげるわ!」
「えっ!? い、いいよいいよ! 自分で出来るよ!」
「なーに恥ずかしがってんのよ! アタシとアンタの仲でしょ! ホラ、ディアナも!」
「え、え? でもそれは流石に、その」
「あああああアーちゃん!? どこ触ってるの!?」
「ほっそ! ちょっと、どうやってこんなウエスト維持してんのよ……ちょっとディアナも見てみて。参考にしましょ」
「……キレイなおへそですね」
「ディーちゃん!? じっと見てから感想呟かないで恥ずかしいから……ひゃっ!?」
「わ、肌スベスベ……ね、化粧品とか何使ってるの? 食事で気を付けてることは?」
「アーちゃん!!! もう!!!」
「……あれ、止めなくていいんですかね」
ドア越しにもはっきり聞こえるくらいの声量で、三人の少女がてんやわんやしている様子がお届けされている。
連れが迷惑をかけていることに申し訳なさを感じた俺がそう提案するも、祭賀氏はむしろ心から楽しそうな、優しい表情だった。
「大丈夫だろう。さ、私たちはこちらで待っているとしよう」
「は、はあ」
穏やかな微笑みを湛えたまま先導する祭賀氏に続き、俺たちは姦しく鳴り響く控え室のドア前を後にした。
祭賀氏はやや開けた、自動販売機が二台ほど並ぶ休憩スペースのようなところで立ち止まった。
「コーヒーでいいかね?」
「あ、お構いなく……」
「フ、子供がそう遠慮するものじゃない。お茶の方がいいか。どうぞ」
「ど、どうも」
俺が辞退するより早く、祭賀氏はペットボトルのお茶を購入し、手渡してくれる。
「貴方はコーヒーで構わないだろう? サンファ殿」
「……フン」
そこでサンファはようやく、祭賀氏の方を正面から向いた。
差し出されている缶コーヒーを分捕るように奪い取ると、開けて……お前マジか。プルタブ開けらんないのお前。
「コレの! コレのせいだからね! 普段ならこんなもの何でもないんだよ!」
「わ、分かった分かったから貸せよ……プッ」
「くっ……! 屈辱だ……覚えてなよキミ……!」
苦々しい顔つきでスチール缶を寄越すクソイケメン顔が面白くて吹き出す。
俺はゆっくりと見せつけるようにプルタブを開け、元の持ち主へと返した。流石にそっと受け取った魔術師は、不機嫌そうに缶に口を付ける。
「さて……よもや再会できるとは思っていなかったよ。異界の魔術師殿」
「ハッ! こっちだってそんな気は無かったとも。ああ微塵もね!」
「私の作成した首輪もお気に召したようで何よりだ」
「……何だい? 喧嘩売っているのかい? 買うよ? ん?」
なんだかサンファがいやに喧嘩っ早いなぁ。今のまんまだと、壮健に見える祭賀氏にも身体能力で劣るんじゃないのか。
俺がそんなことを想っている横で、ズズ、と飲み物を啜る音が聞こえる。
そこには、何食わぬ顔で二人の言い合いを見ている赤上プロデューサーの姿。
……あれ、この人の前でエーテルリンクの話とかしちゃっていいのか?




