揃いのアイテムって戦隊ヒーローしか持ってない気がする①
「ほぉー……あの大嵐はジフの魔法嵐だったのかい。それはまた災難だったねぇ――痛い!? ちょ、ちょっとユーハ君、あまり多くの人前で手を上げるのはいかがなものかと思うんだけれど!?」
ジフ・ハーシュノイズという名の、嵐を体現したかの如き魔術師の襲撃が明けた翌日。
とあるショッピングモールの広場付近に発生している人の列に並びながら、そんなとぼけたことを抜かしたクソイケメン野郎の肩に、俺は遠慮なく鉄拳を叩き込んだ。
お前な。お前のせいでえらいとばっちりを受けたんだぞこっちは!
下手したら今日この場に参戦することが出来なかったかもしれないのだ。文句の一言も言う権利くらいあるだろ!
ふざけた物言いの魔術師を物理でこらしめた後、俺は再び長蛇の列に目を向ける。
今俺たちがいるのは、俺の住む街のそこそこ大きめのショッピングモール内にある、イベント会場用の広場。
そう、ここは待ちに待った、ルナちゃんのライブが開催される会場なのだ。
広場は、腰の高さくらいのプラスチック製のフェンスで仕切られている。そうして設えられた会場に沿うようにして俺たちを含むライブ参戦者が列を成し、今まさに開場された受付を通り、続々と広場の内部へ入っているところだ。
ディアナとアイリスは、見慣れないショッピングモール内の様々な物――主に女性用の洋服店への関心が大きいようだった――に目を輝かせ、女子同士であれやこれやと話し合っている。
入場までの間、取り残された俺は、終始つまらなそうな表情で、しかし一応ちゃんとついては来ているクソイケメン魔術師に、昨日の顛末の文句を言っていたというわけだった。
「まあ確かに、ジフにも精神操作の魔法は施していたとも。むしろ神位魔術師連中は、エーテルリンクの一般住民より優先して処理すべき存在だからね。いの一番に魔法をかけた相手と言ってもいい……しかし、まさか奴までチキュウに来ていたとはね」
殴られた肩を擦りながら「驚いたよ」と言葉を漏らすサンファ。
ここ数日寝食を共にし、日常会話のやり取りをしたことで、今のサンファの驚きが本心であることが、俺にも何となく分かった。
「どうやって転移魔法用の魔素を工面したんだろうねぇ。トレイユの備蓄を奪おうにも、天壌紅蓮が黙っちゃいないだろうし……キミらが回収したのとは別の雲鯨からかっさらったのかな? それにしたって、魔晶一個と神位魔術師一人の魔素だけじゃあ足りないと思うんだがねぇ……」




