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嵐に宵闇咲く⑦

ハーシュノイズが目を見開きながら振り返った。その視線の先にあるのは、先ほど盾の状態から展開し宙を舞う、三枚の桜色の刃。


そしてその刃全てが、三発の夜色の波動を今まさに受け止めた。


「ッ!?」


一瞬反発し合った刃と波動が、双方に流れる俺の心素(エナ)によって繋がり、闇夜神路(リ・ディアセレナ)の波動を纏う刃へと変じる。


そして、その時を待っていたとばかりの急速な勢いで、一挙に神位魔術師たる青年へと走った。


そんでもって、まだ、だ!


俺は夜色の刃が頭上から走るのを見届けながら、右手の短剣を振り払った。

その意を汲んだリラが、先の刃同様の、桜色の盾を兼ねる二枚の刃と化し、次いでハーシュノイズへと迫る。


そしてそして、更なるダメ押しとばかりに、俺はその場で膝を沈めた。

一瞬の集中ののち、足元に出現した夜色の魔法陣を蹴り、上昇する桜色の刃の後を追う。


「『虚突曜進ランスロット・ディアセレナ!!』」


その式句で、ディアナたる夜色の鎧を身に着ける俺の全身が、一個の槍になる。


頭上から魔法消滅・相殺の能力を持つ闇夜神路纏う三枚の刃。

下方から魔素(マナ)の防御・切断が可能な二枚の刃。

そしてそれらの着弾に合わせた、俺とディアナの追撃。


三種三様の特性、方向からの多重攻撃だ! これなら……


「通、れ――!!」


俺の叫びと同時、三種の攻撃がハーシュノイズというターゲットの元で同時に着弾、炸裂する――

いや、したかに思えた。


その直前である刹那の一瞬で、俺は見た。


夜色の刃が、桜色の刃が、俺の右足が、今にもその身に叩き込まれるという寸前で、青年が口の端を吊り上げるのを。


その認識と同時に、俺の目でも捉えられない何らかの衝撃が、ハーシュノイズを中心とした円状に放出された。


「がっ!?」『……痛ぁいー……』


衝撃を真正面から受けた俺と、衝撃を受け短剣に戻ったリラが、屋上の固いコンクリの床に強く打ち付けられる。


『マスター! リラ! 怪我はありませんか!?』


「だい、じょうぶ、だ……」


その身を案じる相棒の声に答え、俺はゆらりと立ち上がり、頭上を仰いだ。

いったい、何が起こったっていうんだ……?


その疑問を解消するかの如く……見上げた視線の先には、その全身を『嵐』へと変貌させたハーシュノイズの姿があった。


シルエットは先ほどまでのものと何ら変わらない。ただ、その身体を構成する物質だけが、骨や筋肉ではなく、俺へ向けて放った光球や、今なお学校を取り囲む暴風と同じ、雷と風のみへと変わっていた。


その姿を見た途端、言いようの無い緊張感が俺の胸の内を満たす。

見てはいけないものを見てしまったような、出会ってはいけないものに邂逅してしまったような、そんな言い知れぬ焦燥に、冷や汗が浮かぶのが分かった。

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